「次世代モビリティエンジニア育成コンソーシアム」を設立
神奈川工業高校、日産横浜自動車大学校、日産自動車が「次世代モビリティエンジニア育成コンソーシアム」を設立
自動車業界は、EV(電気自動車)や自動運転、コネクテッドカー(インターネットへの常時接続機能を具備した自動車)など技術革新が著しい一方、少子化や理系離れなどを背景に人材不足が深刻化しつつあります。
「次世代モビリティエンジニア育成コンソーシアム」では、工業高校、専門学校、企業が産学連携し、一貫した7年間の育成プログラムを運用することにより、次世代に対応できるモビリティエンジニアを育てることを目指しています。
コンソーシアムの人財育成計画は、2つのステップで実施される予定です。
まずは、神奈川工業高校での3年間において、日産自動車および日産横浜自動車大学校からさまざまなプログラムを提供します。自動車産業やモータースポーツの歴史を学べる見学会や、日産テクニカルセンターの見学、自動車エンジニアとして活躍中の先輩との座談会、日産の最先端技術が学べる授業などを通して、モビリティエンジニアになるための素養を醸成し、自動車業界への興味を喚起します。
そして、日産横浜自動車大学校での4年間では、モビリティエンジニアに必要な知識・スキルを習得。日産自動車直営の整備専門学校ならではの充実した教育環境、最先端の技術を備えた実習車や特別授業により、即戦力となり得るモビリティエンジニアを育成します。
最終的には高度故障診断の実践的スキルを持った国家一級自動車整備士の資格を取得し、自動車業界の第一線で活躍できるエンジニアを育成します。
今回の調印式に参加したのは、神奈川工業高校の片受健一校長、日産横浜自動車大学校の井出泰男校長、そして日産自動車・中日本リージョナルオフィスRSO長の上原健太郎氏の3名。本コンソーシアム設立に関して、それぞれ次のように語りました。
神奈川工業高校・片受健一校長
「社会に開かれた教育を目指し、これまでもいろいろな企業・大学と連携してきました。本校から日産横浜自動車大学校への進学実績、そして日産自動車への就職実績があることから、より高い目的意識を持った卒業生を輩出したいとの思いを持って、本コンソーシアムの実現を提案させていただきました。変化の激しい時代ですが、本コンソーシアムが有益な場となり、本校の卒業生がこれからの日本、世界を作っていく存在になればと思っています」
日産横浜自動車大学校・井出泰男校長
「自動車産業は日本経済を支えている産業の一つではありますが、少子化などを背景に優秀な人材を確保し、育成するのが難しくなりつつあります。今回神奈川工業高校からお話をいただき、高校生の時から自動車産業に興味を持ってもらい、その興味をしっかり育めるような育成計画プログラムだと感じました。このプログラムを通じて自動車産業の理解を深めていただき、車を好きになってもらうことで、1人でも多くの学生にモビリティエンジニアとしてこの業界に飛び込んできてもらいたいと思っています」
日産自動車中日本リージョナルオフィスRSO長・上原健太郎氏
「日産自動車では、交通事故死傷者をゼロにする、排ガスをゼロにする、そしてワクワクな世の中を実現する――を『目指す未来』とし、これらを日産の革新的技術をもって実現することを日産自動車グループの大義としています。例えば、日産のEVには排ガスゼロ技術、そして先進の交通安全技術が盛り込まれており、昨年の国内EV販売台数ではトップ3を日産のEVが独占しています。つまり、日産は高度な技術を持っているだけでなく、それを製品に搭載する技術、そして世の中に広める技術に優れている点が、ほかのメーカーとの違いだと考えています。今回の連携により、多くの高校生が日産の目指す未来そして大義に共感し、興味を持ってくれるようになり、日産横浜自動車大学校を通じて我々の心強い仲間になってくれることを期待しています。そして、この連携が安心・安全、そしてワクワクな世の中を実現する第一歩になることも期待しています」
なお、本コンソーシアムは、神奈川県下の工業高校への拡大を検討しています。神奈川工業高校・片受校長はこう語っています。
「コンソーシアムの育成プログラムは現1年生からスタートしていますが、学年によってプログラムを変えていきたいと考えており、現在その内容を詰めている最中。神奈川県下には9校の工業高校がありますが、まずは本校でプログラムを完成させた後に各校に働きかけていきたいと考えています。中学生にとって、工業高校の機械科が何を学ぶところなのかなかなかイメージしにくいと思いますが、将来自動車系に進みたいと漠然と考えている人はいます。本校の機械科が日産横浜自動車大学校、そして日産自動車とつながっていることがわかれば、学校へのイメージも湧きやすくなるでしょう。この動きを、県内すべての工業高校につなげるという意味でも、非常に有意義な取り組みだと考えています」
伊藤 理子Riko Ito
フリーエディター・ライター
経済専門紙記者、日経ホーム出版社(現・日経BP)編集、金融情報記者、リクルート「週刊B-ing」「リクナビNEXT」編集などを経て、フリーに。Webサイトや情報誌、書籍などで仕事、キャリア、ビジネス、教育分野などのテーマを中心に取材・執筆活動を行う。
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