2024.09.20

 「インターンシップ」学校と職業の往還での学び

 「インターンシップ」学校と職業の往還での学び
CareerMapLaboヨシモト博士による「職業教育アカデミー」開講!
職業教育の第一人者、吉本圭一先生の膨大な知識と研究の中から、未来の職業教育を担う皆さんにぜひ知っていただきたいことをピックアップして講義していきます!

 送り出す側と受け入れる側が同じベクトルで行う専門学校のインターンシップ」

 職業教育は、世界中のあらゆる国で、それぞれの形態で行われていますが、共通しているのは「学校と職業を往還して学ぶ」ということです。
 例えば、大学では学術を中心として省察(リフレクション)しながら学びますが、それに対して職業教育は、これから出ていく『社会』との連携の中で、学校と社会(職業)を行ったり来たり(往還)しながら、社会の生きた知識・技能を学びます。学校と職業の往還というのは、実際に企業等へ出向いて学ぶ、インターンシップや実習が重視されているということであり、たとえ学校の中の座学であっても、教員を連携した企業等から招くことも往還のひとつです。
 インターンシップというと、1997年の三省合意以後、大学のインターンシップのイメージが定着していますが、専門学校で行っているものとは、本質的に異なったものです。大学、特に多くの文系においては、学生が出向くインターンシップ先の業種・職種は多岐にわたるので、学校がすべての仕事を理解し、受け入れ先と情報共有することは現実的に無理です。しかし専門学校においては、インターンシップ先の企業等との連携ができているので、「学生をどう育てるか」という共有がしっかりできている。この「インターンシップに送り出す側と受け入れる側が同じベクトルを向いて行っている」ということ。これが、決定的な違いです。

高い専門知識と技術の応用を社会との連携で行う「職業統合的学習」

 もともと専門学校においては、国家資格取得においても、検定合格などにおいても、実習は重要視され、多くの時間を割いてきたものであり、職業実践課程においても必須要件として定着しています。特にコメディカルにおいては、以前から徹底重視されており、全体カリキュラムの中の相当の時間数が充てられてきました。インターンシップや実習といった、職業を教育カリキュラムの中に定着させる「職業統合的学習」の大きな成果は、学生にとっては、経験による学びの質が格段に上がることにあります。現場に出て、自分に何が足りないかを知ることで、次の学習や学びの意欲につながる、非常に有益な学習となっており、教育プログラムの中の不可欠な部分を担う存在として、今後もさまざまな形態を取り入れながら充実させていくことが期待されます。
 例えば、海外のシステムを取り入れたデュアル型の実習を行う専門学校では、午前中は現場で研修生として仕事をして、午後になると学校で学ぶというスタイルで学校生活を送ります。あるいは海外には、数週間ずつ全てのセクションの全ての仕事を数か月にわたって経験した上で、理論的・体系的な学習を始めるというスタイルもあります。業種・職種によってどんなスタイルが合うのか、どんな企業等と連携していくのか、より効率的で、より深い学びにつながる模索が求められています。

編集/百合草史恵 イラスト/安田友里加
本文はCareerMapLabo Vol.4(2023.8月発行)内の掲載記事です。記載されている内容は掲載当時のものです

吉本 圭一

吉本 圭一Keichi Yoshimoto

日本インターンシップ学会会長
滋慶医療科学大学大学院教授
九州大学 名誉教授

1978年東京大学教育学部卒業。教育社会学を専門とし、特に大学・短大・専門学校等の第三段階教育を中心に、実証的政策科学的な研究教育を行なう。インターンシップや専門的な実習など学術と職業の往還する職業統合的学習に注目し、学修成果の構築、コンピテンシーとキャリアの形成をめぐる今日的特質、教育と職業・社会との移行・接続について国際比較等を通して解明。第三段階教育における学術的アプローチとキャリア教育・職業教育アプローチとの組合せ、目的・方法・ガバナンスにかかる複眼的モデルを探究する。

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