2025.06.12

「専門課程は高等教育機関である」学校教育法の一部改正

「専門課程は高等教育機関である」学校教育法の一部改正
CAREERMAP Laboヨシモト博士による「職業教育アカデミー」開講!
職業教育の第一人者、吉本圭一先生の膨大な知識と研究の中から、未来の職業教育を担う皆さんにぜひ知っていただきたいことをピックアップして講義していきます!

高等教育機関としての職業教育のニーズの高まり

 昨年6月、国会に提出されていた「学校教育法の一部を改正する法律案」が参議院本会議において採決され、全会一致で可決、成立したことをご存知でしょうか? 専門学校の先生方はともかく、高校の先生方はあまりご存知ないかもしれません。今回、職業教育を担う専修学校専門課程について以下3つの点が改正されました。
①専修学校専門課程、いわゆる「専門学校」の入学資格を見直すこと。また学修に関する基準を時間数から単位数により定めること。
②一定の要件を満たす特定専門課程に専攻科を置くことができることとし、当該専門課程の修了者は「専門士」と称することができること。
③大学と同等の項目での自己点検評価を義務付けると共に、外部評価を受けることを努力義務とすること。
 改正の目的のひとつは、学校制度上の違いはあれ、実質的には高校卒業後の進学先として大学に次ぐ存在であり、職業教育及び実践的な人材輩出の役割を担ってきた専門課程の「高等教育機関」としての位置づけを強化し、その教育等の質を確保することです。これは、長年にわたり働きかけてきたことではありますが、リスキリング・リカレント教育を含めて、時代のニーズとして職業教育の重要度が増している今、ようやく一歩ずつ前進してきたと考えています。

専門課程の統合・整理が進み「何を」「どう学ぶか」が明確に

 では、専門課程の何が具体的に変わるのか。高校の先生方にとっては、生徒の進路として、どの専門学校を、何を基準として、どう勧めれば良いのかが大切でしょう。しかしこれまでは、その基準の有無も、どう並べて比べていいのかどうかも、よくわからなかったと思います。従って国家資格が必要ない専門職については、「就職先がどうか」「自校からの卒業生がいるか」くらいしか、違いが見えなかったのではないでしょうか。しかし、その違いが少しわかりやすくなります。
 例えば2年制の専門課程の場合、これまでは「普通の専門課程」と「大学への編入学ができる課程」、さらに「専門士という称号がもらえる課程」、実践的に学べる「職業実践専門課程」という4つが掛け合わせで存在していました。しかし、改正で少し整理が進んで「専門士=編入学できる」となり、「専門士になれるかどうか」と「職業実践専門課程があるかどうか」という見方ができるようになります。さらに両方を備えた「専門士がもらえて、職業実践専門課程もある」という学校を探すこともできることになります。
 令和8年8月の施行までに、さまざまなところで法令が改正・ 改訂・ 新設されていきます。 特に、第三者評価制度については大事なポイントであり、現在も議論が進んでいます。これまでの協議をふまえ、より良い方向へ進むことを期待してください。


編集/百合草史恵 イラスト/安田友里加
本文はCareerMapLabo Vol.6(2025.3月発行)内の掲載記事です。記載されている内容は掲載当時のもの編集/百合草史恵 イラスト/安田友里加です。

吉本 圭一

吉本 圭一Keichi Yoshimoto

日本インターンシップ学会会長
滋慶医療科学大学大学院教授
九州大学 名誉教授

1978年東京大学教育学部卒業。教育社会学を専門とし、特に大学・短大・専門学校等の第三段階教育を中心に、実証的政策科学的な研究教育を行なう。インターンシップや専門的な実習など学術と職業の往還する職業統合的学習に注目し、学修成果の構築、コンピテンシーとキャリアの形成をめぐる今日的特質、教育と職業・社会との移行・接続について国際比較等を通して解明。第三段階教育における学術的アプローチとキャリア教育・職業教育アプローチとの組合せ、目的・方法・ガバナンスにかかる複眼的モデルを探究する。

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