職業教育の第一人者、吉本圭一先生の膨大な知識と研究の中から、未来の職業教育を担う皆さんにぜひ知っていただきたいことをピックアップして講義していきます!
改正の焦点となる「質保証」。評価制度は、どう変わるのか。
2024年の学校教育法の一部改正は、単位制への移行や称号制度の整理、専門学校教育の枠組みを大きく組み替える内容を含んでいます。なかでも現場で戸惑いが広がっているのが「質保証」、すなわち学校評価制度の扱いです。本年4月からの法の施行に際して、実際の運用を左右する施行規則や設置基準といった省令等が揃ってきましたので、今回は、現時点で見えてきた学校評価制度の考え方を整理しておきたいと思います。
専門課程を置く専修学校には、従前より自己評価(今後は自己点検・評価)を行い、結果を公表することが義務づけられていました。その上で今回、学外有識者による評価(外部評価)を受け、結果を公表するよう努める、という規定が加えられたのです。また今回の改正で「特定専門課程」という用語が出てきました。単位制度に基づいて学則を整備することで、2年制以上の課程はほぼ全てが該当し、外部評価を行うことが努力義務となるのです。しかしこれを大学と同様に認証評価の方式で、学校単位で一律に回すことはできません。専門学校の質を保証・向上させるには、評価は機関評価よりも分野別評価に重点を置かなくてはなりませんが、実地調査を含む評価費用は1校あたり100万円を超える可能性もあり、地方の中小規模校にとって大きな負担となりかねません。そして、そもそも評価する機関・団体も不足しています。
大学の評価制度導入時と同様、段階的な導入が現実的。
実はこの状況は、過去の大学改革でも経験されています。2004年に大学の認証評価制度が導入された際、同時に創設された専門職大学院(法科大学院など)では分野別評価が要請されましたが、当初から評価機関が揃っていたはずもありません。そこで認証評価機関が未整備の場合には、自己点検・評価を行った上で外部有識者による評価を受け、その結果を公表・届け出る仕組みが用意されました。今回の専門学校をめぐる評価制度は、この大学改革の考え方を参照しています。なお、現場では「第三者評価」という言葉が使われますが、制度上まず求められているのは、大学の認証評価のような仰々しい評価ではなく、専門分野に親しみのある学外有識者、つまり同分野の仲間による評価でよいのです。また全国一律に大学型モデルを当てはめるのではなく、段階的な導入と猶予期間を設けながら、実行可能な形で質保証を進めていく方向が模索されています。各地の専修学校協会では、有識者リスト整備など外部評価の準備も始まっています。評価は目的ではなく、学生や社会に対して「この学校で何が学べるのか」を説明し、その教育プログラムを充実・向上させるための手段です。制度の言葉に振り回されるのではなく、「誰のための、何のための質保証なのか」という原点を共有しながら、現場に根づく仕組みへ育てていくことが、これからの課題と言えるでしょう。
編集/百合草史恵 イラスト/安田友里加
本文はCareerMapLabo Vol.7(2026.3月発行)内の掲載記事です。記載されている内容は掲載当時のものです。

吉本 圭一Keichi Yoshimoto
日本インターンシップ学会会長
滋慶医療科学大学大学院教授
九州大学 名誉教授
1978年東京大学教育学部卒業。教育社会学を専門とし、特に大学・短大・専門学校等の第三段階教育を中心に、実証的政策科学的な研究教育を行なう。インターンシップや専門的な実習など学術と職業の往還する職業統合的学習に注目し、学修成果の構築、コンピテンシーとキャリアの形成をめぐる今日的特質、教育と職業・社会との移行・接続について国際比較等を通して解明。第三段階教育における学術的アプローチとキャリア教育・職業教育アプローチとの組合せ、目的・方法・ガバナンスにかかる複眼的モデルを探究する。
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