2025.06.12

実際に体感し「仕事」としての意識を高める

実際に体感し「仕事」としての意識を高める
企業側から提供された空き物件を、魅力ある「商品」としてリフォーム提案する『DecoRoomコンペティション』。
中央工学校OSAKAと、不動産オーナーに代わって賃貸物件の管理や資産価値向上を担う株式会社レンタックスが連携し、2013年より毎年開催しているプログラムをご紹介します。

中央工学校OSAKAとは?

毎年業界の技術者ニーズに応える人材を送り出す、来年で設立45周年を迎える建築系専門学校。「建築学科」「住宅デザイン科」「インテリアデザイン科」の2年制3学科と、より高度な知識や技術の習得と4年制大学よりも早く二級建築士資格取得が可能な1年制の「研究科」を設置。

一年次に学んだことの集大成として全学生が同じ課題にチャレンジ!

 街づくりに欠かせない建築業界だが近年は労働力不足に直面している。中央工学校OSAKAではそんな建築業界に確かな知識と技術を持つ学生を送り出す職業教育に取り組み、設計事務所やハウスメーカーなどで経験を積んだ人材を講師に迎え、「興味」を膨らませながら「仕事」として意識づける実践型教育を行っている。
 本プログラムは2年制の全科の学生全員が、2年進級時にスタート。1年で学んだ建築の基礎、CADやデザインソフトのオペレーション、プレゼンテーション方法などの習熟度と成長を実感できる一大イベントだ。一定の制約がある中で、学生が自由なコンセプトとモデル案を設計し、コンペティション形式で提案。全作品を株式会社レンタックスにも提出し、企業・講師それぞれの視点で一次審査を行った上で、二次審査に向けて20作品を選出。さらにブラッシュアップした作品を講師・企業・全学生の前でプレゼンテーションを行い、最終の順位・各賞を決定する。
 題材となる物件は、実際に株式会社レンタックスが管理する空室の賃貸住宅を提供。学生は現地調査からスタートする。
「プラン作成は自分のこだわりを盛り込み、楽しく作成できました。でもプレゼンテーションが苦手で…」と語るのは、研究科に進級を決めた尾方さん。苦手意識があったのは、設計事務所に内定した北田さんも同様。「リハーサルは授業で1回のみ、あとは個人で本番をイメージして、パワーポイントスライドの流れも意識して練習を繰り返しました」。
 2年間で実務レベルの知識と技術習得を目標にしたカリキュラムが組まれているが、自己研鑽にも努める意欲の高い学生が集う中央工学校OSAKA。それは提出される作品にも大きく表れているという。
 初回から携わってきた平上先生は過去の作品も振り返りながら、こう語る。
「時代や流行による違いもありますが、年々完成度が高くなっています。やはり先輩の過去の作品を見てより良いプランをつくろう!と学生が取り組んでいるからでしょう。企業様からも、このままオーナーさんへの提案に持っていける作品が多数あると、高評価をいただいています。同時に実際に商品化にあたっての課題などもフィードバックいただいており、その内容をもとにカリキュラムをブラッシュアップ、授業にも反映しています」。

学生・学校・連携企業はもちろん建築業界にとっても「三方よし」

 学生にとってこのコンペティションは、自分の作品が「商品」として企業に受け入れてもらえる大きなチャンス。たとえ入賞しなくても「仕事」と意識して取り組むことは貴重な経験になる。また学校側は企業からの声を聴けることで時代や社会に即したカリキュラム・授業づくりにも役立ち、連携する株式会社レンタックスにとっても、学生の自由な発想・若い感性が反映された作品に、新たな気づきが多々あるそうで、まさに三方向で大きなメリットのある取り組みと言えるだろう。
 さらにこのコンペティションに参加したことにより「憧れ」の世界を「仕事」として実感することで、社会に出た後に感じることの多い『理想と現実』のギャップに悩むことも減り、離職者減少に繋がりそうだ。さらに最新の知識・技術を学んだ学生たちが、将来の建築業界を担う人材として羽ばたいていくことで、より時代やニーズに合った住居を提供でき、賃貸住宅を所有するオーナーや住む人の満足度の向上にも繋がるだろう。
 そう考えると、まさに「三方よし」を超えた「全方向よし」の取り組みといえそうだ。


インテリアデザイン科・インテリアスタイリングコース
北田妃来さん

クリニック専門の設計事務所に内定。住宅チラシを見ることが好きで、インテリアに興味を持つ。高校在学時に同校のガイダンスに参加、指導方針を聴き入学を決意。

2人暮らしの新婚ご夫婦をターゲットに考えた時に「自分だったら…」と実際に自分が住むことをイメージして、少し暗めの落ち着いた雰囲気の空間にしました。1年時に図面作成やCADだけではなく、デッサン、デザイン系ソフトのオペレーションも全て学べるのですが、このコンペティション用に作成したプレゼンボードが完成した時に、学んできた成果がきちんと反映されていて、自分の成長を実感できた良い機会でした。

インテリアデザイン科・インテリアスタイリングコース
尾方麻美花さん

2年で学んだ知識・技術をより高め、就職までの二級建築士資格取得を目指し、研究科に進むことに。将来の目標は、内装を中心としたインテリアの設計士。

共働きの新婚のご夫婦がお住まいになることを想定し、心も体も休まる空間をコンセプトに、狭いながらも圧迫感がなく、温かみのあるナチュラルなデザインにしました。特にこだわったのは、寝るだけじゃなく、夫婦の語らいの空間としてイメージしたベッドルーム。このこだわりがきちんと伝わるよう、プレゼンの際に話す順番やボードの目線の順番から先生に指導をいただけて、しっかり伝わったことが、上位入賞に繋がったと思います!


\過去実績/

2022年度の学生作品の商品化が実現!

アデザイン科の嶋田有紗さんの作品が商品化!当コンペティションでの商品化は3作品目でした。
「オーナー様や工事業者との打合せに参加し、思い描いていた通りの部屋が完成した時には感動しました!」(嶋田さん)
「黒板を使った壁面のアイデアやエジソン電球を用いたことで部屋全体のブランディングイメージが完成されていたことが評価ポイントでした」(レンタックス担当者)
「築20年以上の平凡なワンルームマンションが、デザイナーズマンションのようになり非常に満足。今後も学生さんの力になれたらと思っています」(オーナー様)


学生さんの着眼点や発想に大きな刺激をいただいています

株式会社レンタックス

 2013年より開催しておりますが、毎年、どんな作品が出てくるか、とても楽しみにしております。長年、賃貸マンションの空室対策として物件価値の向上を目指した内装リフォームを行っていますが、どうしても過去の成功事例に捉われてしまうことがあります。

そんな私たちにとって、学生様の作品に刺激をいただくことが多く、また物件を所有されているオーナー様からも「あの部屋をこんな風にデザインできるんですね!」と驚きのお声をいただく機会も多くあります。実現したい作品は多く、予算的になかなか厳しいこともありますが、過去には3物件を商品化できました。自分が設計をしたプランが実際に形になることで、学生様にとっても自信につながるかと思います。また、商品化を意識した住まいづくりの面白さを実感してもらう機会を提供することで、建築業界を目指す若い方が増えて、業界の発展、さらには社会に貢献できると考えており、今後も継続していきたいと思っております。

取材・文/谷澤陽子 撮影/福田直
本文はCareerMapLabo Vol.6(2025.3月発行)内の掲載記事です。記載されている内容は掲載当時のものです。

平上 秀明

平上 秀明Hiraue Hideaki

中央工学校OSAKA
建築系 教員

設計事務所でゴルフ場・ホテルなど大規模物件の意匠設計を担当、豊富なキャリアを持つ。長年の経験に基づいた知識・技術をもとに、1992年より同校で、主に建築設計製図・卒業制作などの科目を担当。DecoRoomコンペティションには初回開催時から携わっている。

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