
その歩みと今思い描いている未来について取材しました。
専門学校で音響技術を学びミュージシャンを目指す
中学高校とバンド活動をしていて、将来は漠然と音楽の道に進みたいと考えていました。大学進学も考えてはいたのですが、特に勉強したいこともない。ならば、音楽の学校で学ぼうと考え、キャットミュージックカレッジ専門学校のサウンドエンジニア専攻を選びました。
入学してみたら、思ったよりバリバリの理系で驚きました。回路図を書き、自分でスピーカーやマイクを作ったりするなどかなりハード。そして、大阪の学校だからか、なぜか毎回授業でいじってくる先生がいて、「どうやってうまく返すか」を考えるのが大変でした。専門学校では音響技術だけでなく、お笑いの基本も学んだかもしれません。
2年生になって就活が始まり、学校に勧められるがまま数社に応募してみましたが、どれもピンとこない。本当にやりたいことって何だろう?と自問自答し、上京してフリーターをしながら夢だったミュージシャンを目指すことにしました。
上京後は、ネットのバンドメンバー募集にいくつか応募したのですが、皆レベルが高くて…。あるバンドとスタジオに入ったとき「とりあえずCメジャースケールで、BPM150くらいで鳴らすんで入ってきてください」と言われたのですが、一つも理解できず。「今日はなんか調子が悪いなあ」みたいな雰囲気を出して逃げ帰ってきましたが、帰り道「これからどうしよう…」と落ち込んだことを覚えています。
そこからは「何かやらなければ」と焦る日々が続きました。そんなとき、たまたまテレビで狩野英孝さんのネタを見て面白さに衝撃を受け、「お笑いなら自分も舞台に立てるんじゃないか」と考え、ピン芸人として活動を始めました。
はじめは全くウケませんでした。でも「ウケないからやめる」とならなかったのは、周りも全然ウケていなかったから。よく「下を見るんじゃなくて上を見ろ」などと言いますが、下を見るのも大事ですね(笑)。
そんなある日、バイト先の居酒屋に今の相方であるシュウペイが入ってきたんです。当時は今よりもっとチャラくてギャル男。でもこんな人と組んだら面白そうだなと思い、その日から半年間誘い続け、2008年にコンビ結成しました。
ただ、その後も売れない日々が10年近く続くことに。ちょうど長く務めたバイト先が潰れてしまい、潮時かなと思うようになりました。
当時は事務所ライブが活動の中心でしたが、そこそこウケるようになっていて、それに甘んじていた自分がいました。そこで「滑ってもいいから、これまで書き留めたネタやアイディアを全部やり切ってからやめよう」と腹を括ったんです。
そのアイディアの一つが、今のぺこぱのスタイルである「相手を全肯定するノリツッコまない漫才」の原型です。それまで自分がボケ、シュウペイがツッコミでしたが、「ボケっぽいツッコミをするから、ボケをやってくれないか」とお願いして。それが予想以上に大ウケしたので、「この方向に全振りしよう」と決めてネタを磨き上げた結果、M-1グランプリで決勝進出し、3位になることができました。

一度決めた夢や目標を途中で変えても全然いい
音楽の仕事に就きたいと専門学校に入り、ミュージシャンを夢見て上京してきたのに、気づけば全く別のことをしていますね。ただ、その時々に真剣に考えて選択した道なので、後悔はしていません。これらの選択があったから、今の自分があるのだと思っています。
夢や目標は、変わり続けるもの。覚悟を持って決断したことであっても、全然変えていいと思っています。失敗するかもですが、どうなるかわからないほうが人生面白い。学生の皆さんにも、一度決めたことに固執しすぎず、変化を楽しむぐらいの気持ちで臨んでほしいですね。
編集・ライター/伊藤理子 撮影/刑部友康
本文はCareerMapLabo Vol.6(2025.3月発行)内の掲載記事です。記載されている内容は掲載当時のものです。

松陰寺 太勇Taiyu Shouinji
お笑い芸人 ぺこぱ
キャットミュージックカレッジ専門学校卒業
山口県出身。キャットミュージックカレッジ専門学校・サウンドエンジニア専攻(現・音響エンジニア専攻)で学ぶ。卒業後はミュージシャンを目指して上京するも挫折し、フリーターとしていくつかのアルバイトを経験。その後、芸人としてフリーで活動する中、現在の相方であるシュウペイと出会い、2008年にコンビ結成。2018年『M-1グランプリ2018』で準々決勝に進出、翌2019年に初の決勝進出、誰も傷つけない全肯定型の「ノリツッコまない漫才」で第3位となり、結成12年目にして大ブレイク。
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