2024.12.19

専門学校在学中に一級・二級建築士試験に合格

専門学校在学中に一級・二級建築士試験に合格
有名大学や進学校を卒業した後、敢えて専門学校への進学を選び周囲を驚かせた人を取材。
この道を選んだ理由や、今描いている夢などについて伺いました。

最短で資格を取得すべく北野高校から専門学校への進学を選択。 在学中に一級・二級建築士試験に合格

建設ボランティア参加を目指し、建築士を志す

 久松さんは関西有数の進学校から建築系専門学校に進学。同校の研究科在学中の2022年に、一級建築士と二級建築士の試験に合格した。
 建築の道を志したのは、中学生のとき。「家族旅行で東京国際フォーラムを訪れ、ガラス張りの斬新な建築に感動。私もこんな建物を設計してみたいと思った」という。
 高校は、大阪府内トップとされる北野高校に進学。2年生の時に、1年かけて一つのテーマにチームで取り組む「課題研究」というカリキュラムがあり、校舎の快適性について研究。その結果、設計士の理想と、利用者である生徒との間に大きなギャップが生じていることに気づいた。
「設計士にとってはこだわりであっても、校舎を使う生徒は不便に感じている部分が多い。使う人に寄り添う建築が重要なのだと学びました」
 高校卒業後、進学先に選んだのは建築系専門学校の中央工学校OSAKA。専門学校を選んだのは、最短で建築士の試験を受けられるためだ。
「高校時代に、教育施設の建設に関わるボランティアがあることを知り、ぜひ参加したいと考えていました。実際に現場で力を発揮するには、建築士の資格を持っていたほうが有利であるはず。ちょうど、建築士法の改正で、大学や専門学校で指定科目を修めて卒業すれば、実務経験がなくても受験できるようになったので、『最短で資格取得するなら専門学校だ』と考えました」
 中央工学校を選んだのは、BIM(Building Information Modeling)教育に力を入れていたから。BIMとは、3次元モデリングソフトウェアを使い、設計や構造計算、部材選定や施工計画、コストなどを総合的に管理し、より生産性の高い建物作りを行う仕組みのこと。
「建築BIMを導入する企業には補助金を支給するなど、国を挙げてBIMを普及拡大しようとしており、BIMの知識を身に付ければ将来役立つだろうと考えました」

熱意を尊重してくれる環境で思う存分勉強に没頭

 中央工学校では、2年かけて建築の基礎や設備の図面作成などをみっちり学び、研究科に進んでからは2級建築士試験対策の勉強に没頭。
「少人数制なので先生との距離が近く、どんどん質問できました。『二級建築士だけでなく一級も同時に受けたい』という私の思いも受け止め、さまざまなサポートをしてくれました。先生方はみな実務経験が豊富で、現場で役立つ知識や技術を直接学べたのもありがたかったです」
 そして、宣言通り研究科在学中に一級・二級建築士試験のダブル合格を実現した。令和4年度の二級建築士の合格率は25.0%、一級建築士はわずか9.9%。「この難関を突破できたのも、専門学校で勉強に没頭できたから」と久松さんは振り返る。
 現在はBIMの専門家集団であるBIM LABOで、契約社員として働いている。オフィス出勤はほとんどなく、ほぼリモート。ボランティアにも注力したい久松さんにとって、働き方が自由な今の環境は理想的だ。仕事では企業へのBIM導入支援を手掛けつつ、並行して仕事にもボランティアにも役立つCADやプログラミングの勉強を行っている。
「早くCADの技術を身に付けて、海外ボランティアに参加するのが当面の目標。同時に、プログラミングやVRなどの技術も磨き、操作性の高いBIMツールの開発にも関わりたいと思っています。そして将来的には、さらにスキルの幅を広げ、建築士としてさまざまな課題解決を実現するのが目標です」

中央工学校OSAKA

1981(昭和56)年、「大阪中央工学校」として開校して以来、一貫して工業専門教育に注力。企業などと連携し、実践的で即戦力の技術者育成を行っている。建築学科、住宅デザイン科、インテリアデザイン科があり、卒業後は1年制の研究科に進む道も用意されている。


<Column>

曽和利光 氏


人事コンサルタント。リクルートやライフネット生命などで人事責任者を務め、2011年に株式会社人材研究所を設立。『人事と採用のセオリー』(ソシム)など著書多数。

進む「仕事の専門化」。早期に自らの専門性を考える機会を

 経済環境の変化や企業間競争の激化などを背景に、各企業で「仕事の専門化」が進んでいます。より高い成果を上げるために、それぞれの領域で高い専門スキルを持った人が求められる傾向にあります。この流れに対応するためには、できるだけ早い段階で自分の専門領域を見定め、知識を習得し現場で修練を積むことが重要。一つの分野に継続的に取り組み、一定の閾値を超えると、揺るぎないスキルが装着されます。
 したがって、高校生の段階から自分はどんな専門性を身に付けどんなキャリアを歩みたいのか、自律的に考えることは非常に重要。教育現場においては、世の中で必要とされている成長分野や人手不足の分野に進むのか、それとも自分のできること・好きなことを専門として突き詰めるのか、じっくり考え選択するためのサポートが求められます。

編集・ライター/伊藤理子 撮影/刑部友康、内山光
本文はCareerMapLabo Vol.5(2024.1月発行)内の掲載記事です。記載されている内容は掲載当時のものです。

久松 夕花

久松 夕花Yuuka Hisamatsu

中央工学校OSAKA
建築学科・研究科卒業
株式会社BIM LABO

2001年生まれ、大阪府出身。府立北野高校卒業後、中央工学校OSAKAに進学。建築学科で2年、研究科で1年学び、2023年3月に卒業。在学中の2022年に一級建築士と二級建築士の試験にダブルで合格する。現在は株式会社BIM LABOで契約社員として働きながら、建設ボランティアへの参加を目指している。

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