その歩みと今思い描いている未来について取材しました。
専門学校卒業後、料理店や食品メーカーで経験を積む
外食より家でご飯を食べることを大切にしていた家庭で育ち、自然と料理好きに。大学時代に独り暮らしを始めてからは、さらに料理を作る機会が増え、写真部の仲間を招いて手料理を振舞っていました。
その頃から、将来は料理の道で独立したいと思い始めていたため、卒業後は惣菜店を展開するロック・フィールドに就職。商品開発について学べれば将来につながりそうだし、ぜひ製造現場を見てみたいと工場勤務を選びました。工場では、出汁を取ったり素材の下ごしらえをしたり。商品開発部が決めたレシピ通りに作るのですが、希望する商品開発に携わるまでに何年かかるかわからず、将来に焦りのような気持ちを覚えるようになっていました。
そんなとき、NHK『きょうの料理』のコンテストに応募したのが転機になりました。初めて一からレシピを考え、ぬか漬けを具材にした生春巻きを作ったところ、最後の3人まで残ることができたのです。
優勝は逃したものの、審査員の陳建一さんに気に入っていただき、翌日お店にお招きいただきました。プロの世界を垣間見て刺激を受けるとともに、やはり自分には実力が足りないと痛感し、会社を辞めて辻調理師専門学校へ入学しました。
ここでの1年では、和洋中あらゆる料理の基礎をギュっと凝縮して学ぶことができました。同級生には私のような社会人経験者や、定年後に料理店をやりたいというかなり年上の人もいて、刺激を受けました。
卒業後は、独立を視野に入れて日本料理店に入社。朝から仕込みを始め、昼営業が終わった後は休む暇なく弁当作り、そして夜の営業…という激務ぶりでしたが、弁当の盛り付けや味付けなどを任せてもらうことができました。その後、料理人としての幅を広げるために寿がきや食品の研究開発部門に転職。麺類や鍋つゆなどといった加工食品の開発に携りました。
なお、現在運営しているレシピサイト『白ごはん.com』は、寿がきやに入社してすぐ作ったもの。日本料理店での勤務に比べると早めに帰宅できるようになり、時間を持て余すようになったのがきっかけです。
私が大学に入学した頃は、個人がホームページを作るのが流行っていた時代で、私も見よう見まねで作り、写真部で撮った画像を上げたりしていました。その経験を思い出し「料理屋で学んだことをレシピにして発信したら、誰かの役に立てるのでは」と考えたのです。はじめは閲覧数もわずかでしたが、メディアで取り上げられたのを機に、ウェブマガジンからレシピ投稿の依頼があったり、レシピ本の話が来たりするように。社外活動が増えたことで、自然な流れで独立しました。

面白そうと思えたものにはとりあえず乗ってみる
私が紹介しているレシピは「自分がおいしいと思えるもの」という軸をぶらさないようにしています。そのため、日々の生活が反映されていて、たとえば娘が高校に進学してからは、お弁当のおかずが増えました。その時々でいいなと思えるレシピやコンテンツを、直接皆さんに届けられることに、大きなやりがいを感じています。
これまでいろいろな環境で料理に携わってきましたが、すべての経験が今につながっていると感じます。例えば、大学時代の写真部での活動やホームページ作成経験がなかったら、自分のメディアなんて作れなかったと思います。
遡れば、サイト内のアイコンやレシピ本などで使っている「ゴム版画」は、小学校時代の習い事が原点。初めての雑誌連載とレシピ本作成の際には「ぜひゴム版画の作成も」と依頼されたので、この経験がなければどちらの仕事もなかったかもしれません。
これらのことから、「面白そう」「これ好きかも」と思えるものが見つかったら、まずは挑戦してみることをお勧めしたいですね。どんなに小さなことであっても、いつか思わぬキャリアにつながるかもしれません。何より、そういう挑戦を繰り返すことで、人生がより楽しく、豊かなものになると思いますよ。
編集・ライター/伊藤理子 撮影/坂口善徳(優希photo)
本文はCareerMapLabo Vol.6(2025.3月発行)内の掲載記事です。記載されている内容は掲載当時のものです。

冨田 ただすけTadasuke Tomita
料理研究家 『白ごはん.com』主宰
辻調理師専門学校卒業
山口県出身。大学卒業後、2002年にロック・フィールドに就職。2003年に退職し、辻󠄀調理師専門学校に入学、1年間料理の基礎を学ぶ。名古屋の和食店勤務を経て、2007年に寿がきや食品に入社し、加工食品の研究開発に携わる。同時期に和食レシピサイト『白ごはん.com』を立ち上げ、人気サイトに。2014 年に料理研究家として独立。
『白ごはん.com』https://www.sirogohan.com/
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