2024.08.21

日本の専門学校では初 メタバース内の実証授業

日本の専門学校では初 メタバース内の実証授業
近年、話題に上がる「メタバース」はネット上の人数参加型の仮想空間のこと。
日本の専門学校の中でいち早く「メタバース授業」に取り組んだ福島県FSGカレッジリーグ国際アート&デザイン大学校の狙いとは。

FSGカレッジリーグ
国際アート&デザイン大学校
福島県郡山市にある私立の専門学校。デザイン、エンターテイメント、ペット産業に強みを持ち、専門知識・技術の習得を元に学生の「学び」を広く支援している。

 「メタバース授業を取り入れたのは、学生と教員、それぞれのチャレンジの時間を創出したかったからです」
そう語るのは副校長の市田比佐浩氏だ。同校は2022年9月からメタバースプラットフォームを活用した実証授業を導入。対面とのハイブリッド方式で授業を行っている。また、Teamsなどのツールを教員向けに採用し、ミス削減や管理責任の明確化にもつなげている。しかし、大きな成果は、やはり学生・教員双方の時間創出だ。
 「授業のオンライン化で、学生は通学時間を好きなことに使えるようになりました。また、教員は書類作成にかかる時間が削減され、授業の個別最適化などに時間を使えるようになり、いい成果が出ています」
 DX化に加え、教員と学生の考える時間を創出する仕組みを作るほか、他学科との合同授業も実施している。では、DX化に対し、ネガティブな声はなかったのか。
 「学生・教員とも、特に反対の声はありませんでした。オンライン授業は、もともとコロナ禍での対応として始められ、メディアでは学生の不満も伝えられましたが、学内でアンケートを取ると大半の学生は満足だと答えていたんです。スムーズに移行できる土壌はあったと考えています。対面授業にこだわる風潮もありますが、それは先生側の都合で、学生のためには教員の意識を変えていく必要があると思いますね」。
 事実、メタバース授業はさまざまなメリットをもたらしているようだ。学生はアバターで受講することでリラックスして授業を受けることができる。教員は、いままで板書してきたものを、画面上で共有することができるため、教師生徒共に、同時に同じものを即座に見ることができる。また、電子書類で資料や課題を配布することで、学生にとっては学び直しがしやすくなった。さらに、電子書類にすることで、翻訳ツールでの変換が容易になり、外国人学生にとっても学びやすくなったという。
 最後にDX化を導入した同校の展望を聞いた。
「DX化はメリットが多い一方、リアルな交流を減らします。そこで、専門学校としては珍しいサークルを作ってみようと思案中です。外部講師を招いて、深掘りができる体験をさせてあげたくて。DX化で得られた時間で、いろいろな企画をしていきたいですね。学生の夢を叶えるために、私たち教員ができることは何でもサポートしたいです」

学生はアバターのほうが授業を受けやすい? 「beCAMing」を使用したアンケート結果によると、学生はアバターで画面に出たほうがリラックスして授業を受けられるようだ。また、教員もアバターで登場したほうが、生徒は集中して授業を聞けるとの結果が出ている。今後の教育現場では、アバター活用がカギになるかもしれない。

「beCAMing(ビカミング)」を活用した授業風景 アバター生成・着用アプリ「beCAMing」を活用した、メタバース授業の様子。教員は学生のアバターの動きやリアクションで授業態度を知ることができるため、学生評価に支障はない。むしろ、一覧で見られるため、個別最適化も容易だ。学生の発言も増え、双方に良い効果をもたらしている。

学校行事としてeスポーツ大会を開催
コロナ禍でイベントを開催できない中、全学横断でeスポーツ大会を開催。学生たちの盛り上がりは、教員の想像以上だったそう。学生は「他学科の学生との交流ができてよかった」とポジティブな声も寄せられた。まだ続くコロナ禍で、ひとつの体験創造のソリューションになりそうだ。

実際に授業を受けた学生はどう感じている?
メタバース授業と聞くと「難しいな」と感じる人もいるかもしれません。ですが、僕はむしろ初心者でも簡単にできて、授業も聞きやすくなる画期的なツールだと感じています。 受講中には自身のアバターを通してコミュニケーションをとったり、モーションを使って感情表現できたりして、今までよりも関係の幅が広がりました。発言せずにチャットで質問ができるので、積極的に意見を出せるようにもなっていますし。友人とも積極的に交流できるようになって楽しく授業を受けています。

編集/木谷宗義(type-e)
本文はCareerMapLabo Vol.2(2023.1月発行)内の掲載記事です。記載されている内容は掲載当時のものです。

市田 比佐浩

市田 比佐浩Hisahiro Ichida

FSGカレッジリーグ
国際アート&デザイン大学校
副校長

福島県の専門学校グループであるFSGカレッジリーグに入職し、国際医療看護福祉大学校の事務局・広報担当に配属。3年目に国際ビューティ&フード大学校に異動し、事務局長として7年間務める。その後、国際情報工科自動車大学校で4年間事務局長を務めた後、FSGカレッジリーグ事業推進部の課長を経て、2021年4月に国際アート&デザイン大学校副校長に就任する。

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