2024.08.29

「都市とSDGsの関わり」についての講座や研究

「都市とSDGsの関わり」についての講座や研究
『鹿児島工業高等専門学校』
都市の課題解決などSDGsにまつわる研究に注力

<鹿児島工業高等専門学校>

1963年開校の、鹿児島県霧島市にある国立高等専門学校。「未来の技術を創る人を育てる」との教育理念を掲げる。設置学科(準学士課程)は機械工学科、電気電子工学科、電子制御工学科、情報工学科、都市環境デザイン工学科。専攻科(学士課程)は機械・電子システム工学専攻、電気情報システム工学専攻、建設工学専攻。

氷室昭三 Shozo Himuro
鹿児島工業高等専門学 校長
熊本大学大学院終了後、製薬会社を経て有明高専の講師に就任、以来30年以上教鞭をとる。同校の教授を経験後、米子高専の校長に就任。2019年より現職。工学博士。

内田一平 Ippei Uchida
鹿児島工業高等学校 
都市環境デザイン工学科 准教授
長岡技術科学大学・大学院で都市計画について学び、鹿児島高専の土木工学科助手に就任。2013年より現職。都市計画、地域計画を専門とする。工学博士。

20年前からSDGsの考えを授業に取り入れる

 鹿児島工業高等専門学校(以下、鹿児島高専)では、数年前よりSDGsに関する取り組みに注力している。
 2022年1月に志學館大学、霧島市教育委員会との連携講座「隼人学」でSDGsをテーマとしたまちづくり講座を開催したほか、4月には高専機構が主催する「JSTS 2022(持続可能な社会構築への貢献のための科学技術に関する日本セミナー)」の運営を担当、「みんなを笑顔にする超スマート社会とクリーンエネルギーの実現」をテーマに海外の学生も交え意見交換を行った。SDGsに対する一般の興味関心は高く、いずれも多くの人が参加した。
 授業においても、早い段階からSDGsの視点を取り入れている。
「2000年初頭からスマートシティについて取り上げ、2010年ごろからはSDGsの前身である途上国を中心としたMDGs(ミレニアム開発目標)にも注目。SDGsの考えは必ず将来必要になると思い、折に触れ授業で説明してきました。現在は、環境負荷のないエネルギーについて取り上げることを検討中です」(都市環境デザイン工学科准教授・内田一平先生)
 内田先生が教える都市環境デザイン工学科では、人々の生活の場を「都市」と位置付け、国内外の都市が直面する諸問題を解決するための技術を学ぶ。SDGsの目標のなかでも、11『住み続けられるまちづくりを』との関わりが深い。
 5年生の住吉恭幸さん、松下天哉さん、西啓太さんも、それぞれSDGsに関わる研究に取り組んでいる。
 松下さんは、良好な環境づくりを目的に建築物の用途に対して規制ができる「特定用途制限地域」について研究。技術系公務員を目指す住吉さんは都市の防災について、西さんは、立地適正化計画の都市機能誘導区域の研究に取り組んでいる。

学生がSDGsの本質を理解し社会で生かせるようサポート

 鹿児島高専の氷室昭三校長は自校の取り組みについてこう話す。
「当校では以前から、学生のwell-being(ウェルビーイング)に注力しています。我々を取り巻く環境は激変していて、先の読めないVUCAの時代と言われています。そんな中だからこそ、人々がより良く生きることができる社会を構築しよう、それを先導できる技術者を目指そう、と学生たちには伝え続けています。この考えは主に、SDGsの目標3『すべての人に健康と福祉を』に該当します。授業を通してSDGsについて学ぶだけでなく、学生自身がより良く生きるために何をなすべきか、考え実行できるような教育を展開していきたいと考えています」
 そして内田先生は、「教える側の姿勢」として次のように話す。
「工学系の仕事に就いている人は、人類が抱えている課題や問題点の解決を目指して、日々技術の進歩に取り組んでいます。そういう意味では、日々の取り組みのほとんどがSDGsに関わるものであり、SDGsの目標はいわば実践するのが当たり前のものばかりとも言えます。今後も、学生たちがSDGsの本質を理解し、その学びを社会で活用できるようなサポートを続けていきたいと思っています」


松下天哉さん 
都市環境デザイン工学科 5年
「生活に必要な都市機能をまとめ、生活圏を小さくする『コンパクトシティ』が注目されていますが、特定用途制限地域がコンパクトシティの居住誘導区域外にある場合、都市機能が広がってしまう可能性を考え、既存のさまざまなケースを検証しています」

住吉恭幸さん
都市環境デザイン工学科 5年
「都市再生特別措置法の改正を受け、コンパクトシティを実現するためのマスタープランである立地適正化計画に『防災指針』を取り入れることが義務化されたため、鹿児島ではどういう対策をするべきなのか、事例を調べながら検証を続けています」

西 啓太さん
都市環境デザイン工学科 5年
「どんな誘導施設を設定すれば、人が集まり近くに居住してくれるのか、誘導地域にある施設が本当に誘導に役立っているのか、既存施設の影響度を測り検証しています」

本文はCareerMapLabo Vol.2(2023.1月発行)内の掲載記事です。記載されている内容は掲載当時のものです。

内田 一平

内田 一平Ippei Uchida

鹿児島工業高等学校 
都市環境デザイン工学科 准教授

長岡技術科学大学・大学院で都市計画について学び、鹿児島高専の土木工学科助手に就任。2013年より現職。都市計画、地域計画を専門とする。工学博士。

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