その歩みと今思い描いている未来について取材しました。
海外での紆余曲折を経てつかんだチャンス 悩みや不安を乗り越え、音楽がどんどん楽しくなった
留学先ではとにかく上を目指しひたすら努力し続けた
音楽好きの両親の影響で、幼稚園の頃から音楽教室に通いピアノを習っていました。その後、いろいろな音楽に触れましたが、高校時代にジャズピアニストの大西順子さんのコンサートに行き、あまりのかっこよさに衝撃を受けました。
同時期にアメリカ文化にも興味を持っていたのですが、大西さんがボストンのバークリー音楽院の卒業生と知り、「バークリーに行けば、アメリカに行って音楽も学べる!」と進路を決定。バークリーの提携校で、同校の奨学金試験も受けられるという甲陽音楽学院に進学しました。
甲陽では、ジャズ作曲を専攻。アンサンブルの授業も多く、ギターやベース、トロンボーンなどさまざまな楽器と一緒に演奏することもあり、新鮮で楽しかったですね。バークリー出身の先生から直接学べる機会も多く、刺激を受けた2年間でした。
そして卒業後、いよいよバークリー音楽院へ。周りの学生たちの志のレベルが高く、圧倒されました。みんな一日中練習室にこもって練習しているんです。彼らに刺激を受け、私ももっと頑張らなければ!と奮起し努力し続けました。しかしその反動か、卒業後、自分は何になりたいのかわ
からなくなったんです。ニューヨークに移り、ピアノ教室で働きながら将来を模索しましたが、これというものが見つからない。モヤモヤとした日々が4年ほど続きました。
転機になったのは、坂本龍一さんのラジオ番組のオーディションコーナーに曲を送ったこと。当時打ち込みソフトにハマり、誰に聴かせるわけでもなくメロディを作り、自分の歌も乗せていたのですが、「誰かに聴いてもらい、感想を聞かせてほしい」と思うようになったんです。
軽い気持ちで応募したのですが、ありがたいことに曲をオンエアいただき、その後ニューヨークの事務所に呼んでいただき、コンサートにも出させていただきました。そして、坂本さんプロデュースでデビューが決まり、日本に帰国。坂本さんとの出会いを機に、何もかもが一気に動き出したという感じでした。
海外ツアーで音楽は世界共有なのだと改めて実感
ただ、デビューして数年は、自分に自信を持てずにいました。それまで人前で歌ったことがなかったので、ライブでもいつも緊張して、自分をうまく出せずにいたんです。
3枚目のアルバムの発売記念で、初めてバンド編成でライブを行ったことが、第二の転機になりました。自分の曲をこんなに素敵に演奏してくれる人たちがいて、たくさんの人が聴きに来てくれる…なんて幸せなことなんだろうと感謝でいっぱいになったんです。アーティストとして、新しい扉が開いたような感覚でした。
そして2018年には、初の海外ツアーでアルゼンチンを訪れました。日本語の曲ばかりなのにものすごく盛り上がってくれて、嬉しかったですね。
言葉は違っても、音楽は世界共通なのだと、改めて実感できました。海外のファンからメッセージをいただく機会も増えたので、また海外を回れたらと思っています。
これからも、音楽を通していろいろな活動をしていけたらいいなと思っています。例えば以前、自身のアルバムをオーケストラ化し、オーケストラとともにコンサートを行いました。このような大きなチャレンジもしてみたいし、一方で海外を含め知らない土地を回って現地の人と触れ合うようなライブもしてみたい。今の自分に必要だと思える活動に、どんどん挑戦していきたいですね。
『小鳥観察 Kotringo Best』
自身の選曲によるベストアルバム『小鳥観察 Kotringo Best』が好評発売中。デビュー曲「こんにちは またあした」の新録を含むオリジナル編とカバー・コラボ編の2枚組・全32曲が収録されている。
編集・ライター/伊藤理子 撮影/平山愉
本文はCareerMapLabo Vol.3(2023.4月発行)内の掲載記事です。記載されている内容は掲載当時のものです。
コトリンゴKotringo
音楽家
甲陽音楽学院(現:神戸・甲陽音楽&ダンス専門学校)卒業
甲陽音楽学院を卒業後、ボストン・バークリー音楽院に留学。学位取得後、ニューヨークを拠点に演奏活動を開始。ラジオのオーディションコーナーを機に坂本龍一氏に見いだされ、同氏プロデュースのシングル『こんにちは またあした』で2006年に日本デビュー。その後、アニメーション映画『この世界の片隅に』(2016年)の音楽を担当するなど活躍の場を広げる。2018年には初の海外ツアーでアルゼンチンを訪れ、全6公演を成功させた。
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