[概要]
大阪調理製菓専門学校は食をテーマに泉州エリアの行政・企業と連携し地域を盛り立てている。今回は地産みかんを使用したスイーツ開発に挑んだ。
[ビジョン]
2025年大阪・関西万博を目指し、泉州美食EXPOをキックオフ。専門学校を要とする産官学の取り組みで泉州地域を美食の街にする。
「地産みかん」でスイーツレシピ開発 食で地域を盛り上げる「泉州美食EXPO」
大阪調理製菓専門学校は、大阪泉州地域で唯一の調理師・製菓衛生師養成施設。全国的にもトップレベルに値する実習量と、幅広い視野を養う教育カリキュラムが注目を集めている。2022年11月12日(土)、13日(日)には、和泉市および三井ショッピングパークららぽーと和泉との連携による産官学連携イベント「みかんフェスinららぽーと和泉」を開催。学生が地産みかんを活用したスイーツレシピを考案し、当日は製造販売にも従事した。
このイベントは、現在同校が進めている”泉州美食EXPO“というプロジェクトの一環によるものだ。大阪調理製菓専門学校を拠点として泉州地域の12市町と企業・生産者・シェフが連携し、2021年にキックオフ。食をテーマに地域を盛り上げ、100のストーリーを作ろうと取り組んでいる。今回は和泉市の特産品である和泉みかんをテーマに、ららぽーと和泉の8周年イベントにあわせて企画を進行した。立案から携わった製菓総合本科の吉本先生は語る。「あまり知られていませんが、和泉みかんは和歌山産と比較できないほど美味しいんです。地域食材の素晴らしさを伝えると共に、せっかくなら高校生ともこの機会を共有できればと考えました」
高校生も協働商品づくりの難しさを知る
大阪調理製菓専門学校は高等学校とも連携協定を結んでいる。今回は大阪府立堺上高等学校と和歌山県立和歌山高等学校に協力を仰いだ。和歌山の高校生には和歌山のみかんを使ってもらえるよう、「和泉市VS和歌山県 みかん対決」として焼き菓子の商品開発を依頼。吉本先生が高校に出向いて助言や指導を行いながら、高校生の思い描くレシピを形にしていった。「高校を訪問した際、最初に生徒たちがホットケーキミックスを持ってきてビックリ(笑)。まず、焼き菓子とは何かという話からはじめて、徐々にヒアリングや提案をしながら商品開発につなげていきました。最終的に良い商品が完成しホッとしています」(吉本先生)
一方の専門学校では、製菓総合本科の一年生が商品開発に挑んだ。同校のカリキュラムでアレルギー対応のスイーツレシピコンテストを実施していることもあり、出品した8品のうち、一つは卵、乳、小麦を使わない商品とした。アレルギー対応スイーツを担当した学生たちは、卵を使用しないスポンジづくりに悪戦苦闘したが、試行錯誤の末ようやく「商品」と呼べるスイーツが完成。吉本先生も、みかんだけでこれだけの商品数を考案したことはなく、レシピが被ったり黄色一色になったりしないよう配慮しながら指導にあたったという。 日頃から実習を重ねているとはいえ、販売するに足る「商品」を作ることは学生たちにとって初めての経験だった。100単位のスイーツ製造となれば、材料の配合にも微妙な調整が必要となる。包装にも気を抜けない。一度は完成としたものの、先生に妥協を見抜かれてやり直しを重ねた学生もいた。
「実習で作っているのは自分で食べるものですから、多少なりとも妥協や甘えがでます。今回、”商品を作る“という意識をもつことで、今までなんとなくしていた工程を気にしたり、注意深く作業を進めたりする様子が見て取れました。普段はプロの視点からアドバイスをしても、届いていないなと感じることが多いのですが、意識が変わったあとの吸収力はすごいですね。イベントの前と後では顔つき、動き、すべてが違う。みんな見違えるように成長したと思います。」(吉本先生)
地域や社会の一員として専門学校が要となって進めるまちづくり
ベストを尽くして臨んだ当日、多くのお客さんがイベントブースの前で足を止め、学生が考案したケーキを買い求めた。息つく暇もない忙しさの中、笑顔で接客をする学生たちの表情には、誇りと自信が溢れる。各日800個用意した商品は両日とも完売し、イベントは大盛況で幕を閉じた。
授業の一環あるいはプロジェクトとして、日常的に対「社会」を意識したお菓子づくりを経験しているためか、同校の卒業生は就職先から「動きがいい」「指示待ちではなく自ら動く」と評価される機会が多いという。「常に周りをみて動け」それは講師陣が日頃から学生に伝えていること。今後も社会の第一線で活躍する人材の育成に注力すると共に、パティシエや調理師の職業価値を高められるよう貢献していきたいと吉本先生は語った。
和泉市をはじめとする泉州地域は食の宝庫。魅力を知られることなく埋もれている食材がこのエリアにはまだまだある。泉州美食EXPOが目指すのは、あらゆる食の資源を活用し、泉州地域をスペインのサンセバスチャンのような「美食の街」、多くの観光客が集まる場所にすること。食にまつわる「100のおもろいを調理する」取り組みは、ゴール地点である2025年の大阪・関西万博に向けて加速度を増す。専門学校が扇の要となり行政・地元企業・生産者と創りあげるまちづくり。地域創生のニューモデルとして期待が集まる。
<実際、イベントに参加して>
1年生
阿南鈴音さん
4回目のイベント経験でしたが、今回はレシピ考案から販売まで一連を担当し、商品に求められるレベルの高さを知ることができました。地産みかんについての知識も得たので、今後のお菓子づくりに活かしたいです。
1年生
高田海莉さん
商品開発に最後まで苦労した分、ケーキが売れる喜びも大きかったです。商業施設で一般のお客様に販売するので、本物のケーキ屋さんになったかのように気が引き締まりました。後輩にもぜひ体験してもらいたいです。
編集/編集部 ライター/飯鉢仁弥 撮影/上林千晶 、内山光、品川英貴
本文はCareerMapLabo Vol.2(2023.1月発行)内の掲載記事です。記載されている内容は掲載当時のものです。
吉本 薫Kaoru Yoshimoto
大阪調理製菓専門学校 学科長
ヒルトン大阪にて活躍後、自身の高級パティスリー・カフェを経営。現在は多彩な経験を生かし今後を担う製菓人材育成のため指導を行う。
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