2024.12.19

学生が仕掛ける少子化対策 青年会議所とコラボで街コン

学生が仕掛ける少子化対策 青年会議所とコラボで街コン

[概要]

YIC情報ビジネス専門学校と山口青年会議所がコラボレーションし、婚活イベント「湯の街狐」(ゆのまちこん)を開催(年2回)。出会いの場の創出を通じて地域課題(少子化)にアプローチする。

[ビジョン]

パートナー協定に基づいた青年会議所×専門学校生のコラボレーションにより、地域や企業を巻き込んだまちづくり・地域課題への取り組みを活性化させる。

<地方創生の仕掛け人たち>

河津道正副校長 Michimasa Kawatsu
学校法人YIC学院 統括副校長
兼 YIC情報ビジネス専門学校


開校当初より同法人に勤務し、多くの地域人材の育成・輩出に尽力してきた。難しい内容も分かりやすく伝えるITとWEBのスペシャリスト。

豊田菜摘学科長 Natsumi Toyota
学校法人YIC学院
YIC情報ビジネス専門学校


ホテルブライダル科 専門式場、ホテル等で約20年活躍。フリーランスとして結婚式プロデュースを手掛けた経験が豊富で、学内外から厚い信頼が寄せられている。

北條榮太郎直前理事長 Eitarou Honjyou
一般社団法人 山口青年会議所

2022年度山口青年会議所 第67代理事長。創業100年余の老舗呉服店、株式会社近江屋副社長。YIC情報ビジネス専門学校の教育課程編成委員も務める。

竹川勇人委員長 Hayato Takegawa
一般社団法人 山口青年会議所

インナーコミュニケーション推進委員会委員長。「街コン」企画の立案・推進に尽力し、学生からも頼られる存在。いすゞ自動車中国四国株式会社勤務。

 新山口駅前に本拠地を構えるYIC学院(YIC情報ビジネス専門学校)は、山口県・京都府に教育機関を展開する山口県内最大の専門学校グループだ。卒業後のキャリアにつながる”体験“を重視する同校では、2022年、山口青年会議所とパートナー協定を締結。白狐伝説が伝わる山口市・湯田温泉にちなみ、「湯の街狐」(ゆのまちこん)と名付けた婚活イベントをスタートさせた。

出会いの場を創出して少子化を食い止める

 我が国において、少子化は大きな社会問題だ。山口県も例外ではなく、2022年の県内出生数は過去最少の7,700人余りと、歯止めがかからない状況が続いている。この地域課題に対して声をあげたのが、山口青年会議所だ。同会議所の竹川氏は、「少子化の背景には未婚化・晩婚化の進行があります。調査の結果、”出会いが少ない“という地域の現状が見えてきたため、出会いの場の創出から突破口を開ければと思いました」と起案の背景を語る。新型コロナウィルスのまん延以降、県下での婚活イベントはほぼ皆無の状態。社会貢献を目的として組織された団体として、果たせる役割があると考えたという。
 また、「志ある仲間と共に、新しい発想で”出会いの場づくり“を盛り上げたいと思った」と語るのは、当時、山口青年会議所の理事長だった北條氏。未来を創る事業だからこそ、学生世代の声も取り入れたいと、自身が教育課程編成委員を務めるYIC学院の豊田先生に相談を持ち掛けたことが今回のタイアップにつながった。
 提案に対し豊田先生は、即座に個人としての快諾の意思を表示。「実践から学べるまたとないチャンス。学生たちが少しでも”結婚って、いいな“と感じる機会になれば、との思いもありました」(豊田先生)
 学生を婚活イベントに参加させることへの懸念もあったが、河津統括副校長に相談したところ意外な回答が。「机上の学びを体験へ、体験をこの先のキャリアにつなげることが、今の私たちのテーマ。今回の件はまさにその流れに沿ったものだと感じたため、協定を結んで本格的に取り組んではどうかと提案しました」(河津先生) 話はトントン拍子に進み、先行してプロジェクトが始動。4月にはパートナー協定を締結する運びとなった。

学生主導の企画立案 プレゼン大会を開催

 プロジェクトに加わったのは、ホテルブライダル科の学生だ。コンペ用資料の概要やスケジューリングについてレクチャーを受けたあと、3つのチームに分かれてアイデアを考案。二カ月後にプレゼン大会を行い、基本のコンセプトを決定する。
 企画段階から各チームに一名、青年会議所のメンバーがサポートに入ったが、若者との交流に最初は若干の戸惑いがあったという。まずは自己紹介からはじめて、少しずつ距離を縮める。学生主導の企画となるよう、助言が過ぎないことを心掛けた。 
 口を出したくなる気持ちを抑えていたのは、青年会議所のメンバーだけではない。河津先生も「行き詰っている様子を見ると、つい”こうしたらいい“と言いそうになって(笑) 視野を広げるヒントを出すことに徹するのは、結構大変でした」と、当時の心境を明かしてくれた。大人たちに見守られながら、初めてのコンペ企画に挑んだ学生たち。授業のない日もオンラインで連携を図るなど、各チームが最後までブラッシュアップを重ねた。2月2日に開催された企画コンペでは、地元のホテル・企業の経営者も審査に参加。浴衣を着てお祭りを楽しむ企画が採用され、イベントの基本コンセプトが決定した。

ポテンシャルに託した当日運営

 青年会議所として婚活イベントは初の試みだったが、地元ホテルが惜しみなくノウハウを提供してくれるなど、周囲の協力に助けられたという。学生たちもまた、”大人の出会いの場づくり“に試行錯誤を重ねる日が続いていた。「地域や企業と関わる中、ビジネスマナーをみずから学び直す学生も多かった」と豊田先生は振り返る。また、何度授業に足を運んだかわからないほど、学生と時間を共にしてきた青年会議所の竹川氏は、「顔を合わせるごとに、目的を共有できるようになった実感がある」と言う。「やることが明確になると動きがどんどん良くなり、モチベーションは当日まで右肩上がり。学生たちのポテンシャルはすごいです」(竹川氏)
 こうして迎えたイベント当日。受付・誘導・司会など、表舞台の運営は学生が中心となって行った。青年会議所の北條氏は「若いスタッフの運営が、参加者の目にどう映るかという心配もありましたが杞憂に終わりました。それだけ学生たちは役に徹していた。見事期待に応えてくれました」と語っている。当日は参加者15組中、4組のマッチングが成立。アンケートには「浴衣など付加価値のある街コンは新鮮だった」と、新発想の企画に好意的な声が多く寄せられた。この結果を受けて10月には「学校でのイベント」をテーマにした第二回街コンを開催。今後もまちづくりにおけるさまざまなコラボレーションが予定されている。
「学生たちが将来、多様な職業キャリアに対応できるよう、今後も学校としてさまざまな体験の機会を提供していきたい」と河津先生。若い発想が地域を変えゆく力になることを信じて、この先を見守りたい。


<イベントに参加した学生の声>

○ホテルブライダル科のみなさん
德永好香さん、島田太一さん、𠩤田崚生さん、桒田和奏さん、木船ひなのさん

 私たちは10月に開催した第2回街コンの企画・運営を担当しました。テーマは「学校でのイベント」。3つのゲームを用意して、当日はハロウィン仕様の設営で参加者の方々をお迎えしました。最初は仮装で参加してもらう案を考えていたのですが、参加者世代の方の意見を聞き、プランを変更。自分たちが楽しい企画ではなく、参加者の方の目線で考える、という視点を持てたことは、大きな学びになったと感じています。プロジェクトの進行にあたっては、情報共有を徹底。話し合いの時はホワイトボードを活用し、議事録や各自の進捗は共有アルバムで管理。また、青年会議所の方へ報告や相談をするときは、自分たちで出した結論をしっかり伝えることも心がけました。
 当日は私たちも緊張していましたが、参加者同士の会話を促したり、ゲームがスムーズに進行するよう配慮したり、一人一人が自分の持ち場でベストを尽くせたと思います。卒業後はウェディングプランナー・ドレスプランナー・ホテル・アパレルなどそれぞれの道に進みますが、今回のイベントをはじめ、在学中の学びや経験を糧に頑張っていきます。

編集・ライター/飯鉢仁弥(エンカレぽっと) 撮影/佐伯信博
本文はCareerMapLabo Vol.5(2024.1月発行)内の掲載記事です。記載されている内容は掲載当時のものです。

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