専門分野を「広げる×深める」で、未知の自分と出会う
今年度からスタートした取り組みの経緯と成果を担当教員に聞いた。
<今回の主役校:学校法人山口精華学園 精華学園高等学校 新潟中央校>
開校5年目。にいがた製菓・調理専門学校えぷろんが校舎運営を担う広域通信制・単位制高等学校。生徒は「通学コース」「通信コース」の2コースから選択可能。一人ひとりの習熟度ややりたいことに合わせた個別カリキュラムがある。
関川 武 Takeshi Sekigawa
精華学園高等学校 新潟中央校 教諭
新潟市出身。全日制や通信制高校での勤務を経て2022年4月に同校へ入職し、今年2年目を迎える。現在は高校3年生の担任を務める。専門は数学。在籍する生徒一人ひとりの気持ちに寄り添う関わりを心がけている。
通年で1つの分野を深める「専門セレクトコース」
全国約50箇所に校舎を構える精華学園高等学校。その中の1校である新潟中央校は、にいがた製菓・調理専門学校えぷろんが校舎運営を担い、専門学校の教員が高校生に授業を行うカリキュラムを展開している。入学した生徒は、「通学コース」「通信コース」の2つから自身に合ったコースを選択し、習熟度や生活リズムに合わせて学んでいく。
卒業生の約半数が専門学校へ進学するという同校では、開校時からさまざまな分野を体験できる授業「バラエティ体験」に力を入れてきた。これまで体験したことがなかった分野に触れることで、自分の夢や好きなことを見つけた生徒は少なくない。
この授業がきっかけとなり導入されたのが、「専門セレクトコース」だ。「専門セレクトコース」では、「基礎学力向上」「美術基礎Ⅰ」「クッキング」「パソコン基礎」「プログラミング」の5つの分野から1つを選択し、一年を通してより専門的な内容を学ぶことができる。
(※年度により開講コースは異なる)。
プロや先輩との関わりから、自分の未来を描く
「専門セレクトコース」の中の1つであるクッキングは、にいがた製菓・調理専門学校えぷろんの教員が授業を担当する。第一線で活躍するシェフやパティシエから直接学べることはもちろん、専門学校の学生が普段使っている調理室を使用できることも魅力の一つだ。
高校教員の関川先生は、いつもとは違った表情を見せる生徒を優しく見守る。「生徒が楽しんでいる様子が伝わってきますね。教員と生徒ではなく、現場のシェフやパティシエから直接教わっているように感じるので、生徒たちはより真剣に取り組む気持ちになるのではないでしょうか」
時には専門学校の学生が授業に入り、サポートしてくれることもあると言う。「生徒にとっては教員よりも歳の近い存在なので話しやすいと思いますね。卒業後の進学先として、専門学校えぷろんを視野に入れている生徒にとっては、自分のロールモデルにもなり得るので、刺激になっていると思います」(関川先生)
クッキングの授業を担当するにいがた製菓・調理専門学校えぷろんの教員は、料理の知識や技能を教えるだけではなく、社会人として必要な礼儀やマナーを身につけてもらうことも意識していると言う。授業では、調理前の準備から片付けまでを生徒たちが中心となって行う姿が印象的だ。
自分の新たな可能性に気づくチャンスにも
関川先生は、「専門セレクトコース」導入のメリットをこう語る。「弊校に通う生徒の中には、中学生の頃は学校に通っていなかった生徒もいます。人と関わることに抵抗がある生徒でも、興味のある分野の学習を通して友達ができたり、自分の新たな一面を発見したりすることもあるようです。さらに、実際に体験することでより自分の進路選択を前向きに考えられるのではないかなと思います」
結果的に、にいがた製菓・調理専門学校えぷろんに進学する生徒は、昨年度の2倍以上に増えたと言う。高校卒業後の進路は、大学や専門学校、就職、留学など多岐に渡る。どの選択をしたとしても、自分自身が納得していることが何より重要ではないだろうか。「専門セレクトコース」は、生徒一人ひとりが自分の「好き」や「得意」を軸にした進路を決めるための”未来に繋がる授業“だと感じる。これからの成果にも注目したい。
<バラエティ体験>
クッキング、アートイラスト、プログラミング、eスポーツ、ヘアメイク、ダンスなど、さまざまなことを週1回程度体験できる。「バラエティ体験」の受講は任意で、年度当初に各生徒が決める。毎回、体験できるテーマは変わり、内容に応じて参加するかを決めることができる。それぞれの分野の第一線で活躍する講師が来校し、授業を行う。
【高校生に聞いてみた!体験談】
精華学園高等学校 新潟中央校
専門セレクトコース 「クッキング」選択
竹内悠斗さん
僕はもともと不登校だったので、登校の頻度を自由に決められることが魅力の一つだと感じて入学を決めました。それまではあまり人と話すことがなかったのですが、クッキングの授業を通して人と話すようになり友達もできました。いろんな友達と話す中で、「人と話すことが好き」という自分の新たな面も知ることができたと感じます。授業は最初に料理の仕方を実演して見せてくれるので、すごくわかりやすいですね。今は全ての料理ジャンルに興味がありますが、特に気になるのはフランス料理です。これから少しずつ作れる料理を増やしていきたいと思います。
精華学園高等学校 新潟中央校
専門セレクトコース 「クッキング」選択
梅嵜京介さん
学校には、週1〜3日のペースで通っています。1、2年生のときに受けたバラエティ体験で料理をしたことがきっかけで、専門セレクトコースのクッキングを選びました。授業で学んだ料理は家でも作って、家族や友人に食べてもらうこともあります。喜んでもらえるのは嬉しいですね。将来は食に関わる仕事に就きたいと思っていて、卒業後はにいがた製菓・調理専門学校えぷろんに進学することが決まっています。進学後は、専門学校の学生としてクッキングの授業のサポートができたら最高だなと思います。
【専門学校のコメント】
にいがた製菓・調理専門学校えぷろん
校長 出塚 彩
製菓衛生師。調理師。大学では家庭科の教員免許を取得。ジャパンケーキショーでは、ラッピング部門連合会会長賞、ディスプレイ部門大会会長賞を受賞。
にいがた製菓・調理専門学校えぷろん
1988年に開校した学校法人三星学園が運営する専門学校。製菓技術科、調理師科、調理技術科の3科に分かれ、さまざまなジャンルの料理について学ぶ。卒業生は3500人を超え、食業界で活躍している。
弊校は食に関わる専門学校として30年以上前に設立されました。それまでは専門学校のみを運営していましたが、この数年で通信制高校を必要としている生徒さんが増えていることを実感しており、山口精華学園さんと連携して新潟中央校を設立するに至りました。
大切にしているのは、ただ単位を取得させることではなく、生きる力を育む教育をしていくことです。そのための取り組みの一つが「バラエティ体験」や「専門セレクトコース」の導入でした。さまざまなバックグラウンドがある生徒たちが、何か一つでも自信を持てることを見つけるきっかけになればと思っています。例えば、料理ができることで、自分にとって大切な人を笑顔にすることができます。自分の興味関心を通して、世界は広がっていくのではないかなと。
お菓子作りや料理を体験することで自分の視野が広がり、また次の新しいことに挑戦するステップになると思っています。高校と専門学校が連携することで、将来に向けての選択肢が増えるのではないでしょうか。最近は通信制高校だけではなく、全日制高校にも出向いて料理の授業をさせていただくようになりました。今後もさまざまな高校でプロのシェフやパティシエから料理を学ぶ機会を提供していきたいと思っています。
編集/編集部 ライター/建石尚子 撮影/松田舞
本文はCareerMapLabo Vol.5(2024.1月発行)内の掲載記事です。記載されている内容は掲載当時のものです。
出塚 彩Aya Dezuka
にいがた製菓・調理専門学校えぷろん
校長
製菓衛生師。調理師。大学では家庭科の教員免許を取得。ジャパンケーキショーでは、ラッピング部門連合会会長賞、ディスプレイ部門大会会長賞を受賞。
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