現場体験を通じて社会で活躍する実践的な力が身につく
インテリア科では、学生寮を管理・運営する東仁学生会館と連携し、学生が実際の学生寮の1室をデザインするというプロジェクトを実施しています。
インテリア科 2年生
栗原 申乃将
青森県出身、都立松原高校卒業。中学2年生の職場体験をきっかけに建築に興味を抱き、デザインを学ぶためインテリア科に入学。
インテリア科 2年生
小嶋 純奈
東京都出身、都立雪谷高校卒業。木工のモノづくりが好きで、オープンキャンパス時に在校生が椅子づくりをしているのを見て入学を決意。
自分たちのデザインが実際の空間になる喜び
東京の学生寮を管理・運営する株式会社東仁(東仁学生会館)と、東京テクニカルカレッジのインテリア科が連携し、学生寮の1室をインテリアデザインすることが「リアルジョブプロジェクト(RJP)」としての取り組みのひとつだ。8つのチームに分けて、クライアントの要望と決められた予算に従って半年以上かけてデザイン案を検討。デザインは図面やCG、模型などの写真をパワーポイントで提案し、最優秀賞を獲得すると実際の学生寮の一室がデザイン通りに施工される。
担当の髙山先生は「通常の授業は座学と実習が中心。先生の話を聞く時間は受動的ですが、RJPは他の学生とディスカッションを重ねて形にしていくので、能動的に取り組まないと前に進みません。クライアントへの発表もあるので、コミュニケーション能力やプレゼンテーション能力の取得にも役立っていると思います」と語る。デザインを検討する際は、現地にも学生が足を運び、学生寮の周辺環境や住み心地などを調査。学生寮に住んでいる学生にアンケートを取って住みやすさや困りごとを聞き、デザインにも取り入れている。男子学生寮と女子学生寮ではデザインの好みも異なるため、コンセプトを固めて実際の家具や素材を決め、部屋のデザインをつくり上げる。
RJPでは、仕事上の試行錯誤を学生時代に体験し、複数人で仕事を推し進める力を養うために、最初は学科横断で家具のデザインやカフェづくりから始まった。インテリア科のRJPでは、インテリア科の学生が勉強するフロアの廊下をリノベーションし、それを見た東仁学生会館が、インテリア科に学生寮のデザインを依頼したのがきっかけ。連携して4年目の現在は、女子学生寮のデザインの大詰めを迎えている。「他の授業と違って、デザインした部屋には実際に学生が住むので、家具の寸法や見積もりの調整から、枕やマットレスなどの寝具にも配慮が必要です。良い意味で緊張感や責任感を持って学ぶことができました(小嶋さん)」。
チーム構成は1年生と2年生の混合だからこそ、学びが大きい。CADやShadeなどのアプリケーションの操作に慣れていない1年生を2年生がフォローするなど、RJPを通じてリーダーシップのとり方も学ぶ。「昨年は先輩がうまく仕切ってくれたのでやりやすかったのですが、自分が引っ張る側になると大変です。みんな素直で指示を出せば動いてくれますが、きちんと流行を考慮しつつ、学生ならではの斬新なアイデアなど、できるだけ意見を引き出して要望を実現してあげたいと思いながら取り組みました(栗原さん)」。
2月に行われる発表の場では、プレゼンテーション後、クライアントである東仁学生会館が各チームの作品への講評も行う。作品への評価は上々な時も、厳しい指摘を受けることもあると言う。「社会人となり仕事の現場に出る前に、企業視点でフィードバックをいただけるのは貴重な機会。学生時代に失敗したとしても、その経験は仕事で大いに役に立つでしょう」と髙山先生は語る。
学生のうちにクライアントからの要望に沿い、コストを意識しながらアイデアを練る。最終的に選ばれたデザインは実際の空間として形作られる。RJPは、学生が社会で活躍するための実践的な力が身につく。絶好の課題解決型授業プログラムだ。
5畳ほどの部屋でも、男性と女性向けではデザインが大きく異なる。2月の発表の場は、クライアントだけでなく、校長や副校長も参加する一大イベント。「学生だからもっと元気良く、飛びぬけたアイデアも欲しい」という声が出ることも。各チーム、住みやすさとオリジナリティのバランスを調整しながらデザインを練り上げる。予算が決められているため、家具や素材選びを通じてコスト感覚も養うことができる。自分たちでデザインした部屋が空間になった際には、学生たちの喜びもひとしお。
1:学生たちがエントリーした模型
2:実際に採用された模型
3:完成した実際の部屋
「体験的学び」を通じて問題解決できる人材に
インテリア科 髙山寿一郎先生
住空間は、家具やカーテン、照明などのインテリアエレメントで構成されています。これらは質感や色などで印象が変わるため、実際に見て触れてみないと正しく理解することができません。そこでインテリア科では、「校外学習」という形でホテルやショールームに赴き、実物に触れて学ぶ機会を設けています。
校外学習でインテリアエレメントの特徴を理解し、授業で住宅や商業施設のコーディネートを行い、RJPで実際の個室をデザイン。講義で得た知識を実習で確認する「体験的学び」を通して、自ら考え問題解決できる人材の育成を目指しています。資格取得にも力を入れていて、1年生でインテリアコーディネーターに合格する学生もいます。
編集/編集部 ライター/只野志帆子 撮影/片山富雄
本文はCareerMapLabo Vol.1(2022.10月発行)内の掲載記事です。記載されている内容は掲載当時のものです。
髙山 寿一郎Juichiro Takayama
専門学校東京テクニカルカレッジ
インテリア科
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