実践を通じて売れる商品づくりにチャレンジ
今回、大阪農業園芸・食テクノロジー専門学校とチョーヤ梅酒株式会社が協力して実施した商品開発から販売までの様子をプロジェクトのキーパーソンたちにインタビューしました!
吉田 信 氏 Shin Yoshida
大阪農業園芸・食テクノロジー専門学校
教務部
前身である大阪キャリナリー製菓調理専門学校(現在の大阪農食)が開校した2015年から在職。教務部長や事務局長を兼任し、学校を作り上げてきたメンバーの一人。海外研修や企業とのコラボレーションにも注力する。
坂本昌也 氏 Masaya Sakamoto
チョーヤ梅酒株式会社
企画広報推進部
企画広報推進部にて、主に商品開発とプロモーションを担当。デザインやマーケティングに携わり、「The CHOYA 銀座BAR」の運営にも関わる。梅マイスターとして活動する梅のプロ。
消費者のターゲティングから原価計算まで実践を通じて売れる商品づくりにチャレンジ
より真剣に食材に目を向ける機会を提供するプログラム
これまで料理の専門学校といえば、料理人やパティシエを目指すために調理法を中心に学ぶのが主流でした。しかし食に求めるレベルは年々高まっており、教育の現場も変化が求められるようになった。
「素材の魅力を知り、最大限まで良さを引き出すことが重要。その原点には農業があります」と話すのは、大阪農業園芸・食テクノロジー専門学校(以下大阪農食)・教務部の吉田信さんだ。調理だけでなく、素材そのものについて学ぶ機会を提供しようと、同校は2023年4月大阪キャリナリー製菓調理専門学校から学校名を改め、新たなスタートを切っている。しかし学校名を改める以前から食の素材について真剣に向き合う機会を提供しようと産学連携での実践学習は行われてきたという。今回、取り上げるのは”梅酒“で広く世に知られている、チョーヤ梅酒株式会社(以下CHOYA)とのコラボレーションだ。
このプロジェクトは、今までにないような生梅を使ったスイーツを作るというテーマがあり、商品開発が始まった。CHOYA・企画広報推進部の坂本昌也さんによると、梅酒を使ったスイーツはこれまでも作られたことがあったが、生梅を使うというのは同社でも初の試みだったという。しかしプロジェクト当初から2023年2月に大阪の万博記念公園で行われる『梅まつり2023』に同社が店舗を出店する際、販売するスイーツを作るという具体的な内容は決まっていた。
「梅は火を通すと香りが飛びやすいので、スイーツづくりは難航すると予測していました」(CHOYA 坂本昌也さん)
早速、大阪農食は学生を7チームに分け、生梅を使ったスイーツづくりを開始。このスイーツづくりにとって欠かせなかったのが、試食会からのフィードバックだった。
「最初の試作段階ではお客様にお出しできるレベルではありません。まずは校内の職員や別の学年の学生、講師などに試食してもらい、アンケート用紙に意見を書いていただきました」(吉田さん)
原価を検討しつつ、売れる商品づくりを目指した
このプロジェクトは、おいしいスイーツを作ったとしても売れなければ意味がないという前提をもとにしていた。企業との取り組みは真剣勝負。校内での試食会を繰り返し、フィードバックをもとにブラッシュアップを重ねていった。次に近隣の消費者向けに一般モニター試食販売を実施。「ポーションサイズを1つ1つ抑えて、販売し、意見を集めました。もちろん、中には厳しい意見もありました」(吉田さん)
試食会で得た全ての意見を取り入れるのではなく、どうすれば売れる商品になるのか、アンケートのフィードバックをいかに商品に反映していくのかは、学生のセンスが問われるという。試食会の意見をもとに試行錯誤を重ねると同時に、CHOYAからもフィードバックを受けつつ、学生たちは商品とセンスを磨き上げていった。「当社としてはCHOYAらしさをどうすれば出せるのか?という視点でアドバイスさせていただきました」(坂本さん)
またCHOYAらしさという点で難題だったのは、”添加物を極力使用しない“という条件だった。焼き菓子を固めるための素材も無添加のものを使用しなければならない。当然ながら、学生たちは国の添加物の基準に関する知識が必要となり、学ぶこととなった。そして、種を抜いたピューレ状の梅、梅酒につけた梅、シロップ、皮などを使った21品ものスイーツを試作。「梅をお菓子の生地に練り込んだり、クリームの絞り方を変えたりするなど、全てのプロセスが真剣だったのが印象に残っています」(坂本さん)
約半年の試作期間を経て、2023年2月『梅まつり』に7種類の焼き菓子、それぞれ350個が販売された。この梅を使った焼き菓子は飛ぶように売れて、即日完売し、大成功のうちに幕を閉じた。
「学生の皆さんはプロと違って、調理法、食材への知識、どれをとってもまだまだ引き出しが少ないです。でもチーム制を組み、何人かでいろいろな角度の意見、アイデアを出し合うことで質の高い学びを得られたと実感しています」(吉田さん)
「原価についても厳しく検討してくださるなど、企業の商品開発と同じレベルで行っていただきました。今後も大阪農食様と組んで新たな取り組みに挑戦したいです」(坂本さん)
同校では大手飲食チェーンや食品メーカーなど、今後もさまざまな企業との取り組みを続けていく予定だ。この企業とのコラボレーションを通じて、失敗も成功も経験した学生が社会に出たとき、きっと新たな商品やサービスが生まれるに違いない。
編集・ライター/松葉紀子(spiralworks) 撮影/太田未来子
本文はCareerMapLabo Vol.5(2024.1月発行)内の掲載記事です。記載されている内容は掲載当時のものです。
吉田 信Shin Yoshida
大阪農業園芸・食テクノロジー専門学校
教務部
前身である大阪キャリナリー製菓調理専門学校(現在の大阪農食)が開校した2015年から在職。教務部長や事務局長を兼任し、学校を作り上げてきたメンバーの一人。海外研修や企業とのコラボレーションにも注力する。
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