一方で、働き方改革と環境整備が進む、建設業界の現場の今を探る。
お話を伺ったのは…

国土交通省 不動産・建設経済局
石井 信 氏
日本の社会インフラは高度経済成長期に集中的に整備されたものが多く、老朽化が急速に進んでいる。国土交通省の調査「建設後50年以上経過する社会資本の割合」(2023年3月時点)によると、建設後50年以上が経過した道路橋は約37%、トンネルは約25%を占め、2040年には道路橋で約75%に達すると推計されている。現場では”いつ壊れるかわからない“設備を維持・更新し続ける必要があり、その担い手不足が深刻化している。
建設業の高齢化と人材確保の必要性はとりわけ顕著だという。 建設業就業者のうち、2022年(令和4年)時点で55歳以上は35.9%、29歳以下は11.7%程度(出典:総務省「労働力調査」(暦年平均を基に国土交通省で算出したもの)にとどまっており、全産業と比較しても高齢化の進行が早いことがわかっている。特に技能者と呼ばれる熟練職人は、1997年(平成9年)には455万人だったのが、2022年には302万人と153万人も減少しており、技能継承の観点からも若手人材の確保は喫緊の課題だ。
こうした状況を受け、国土交通省は働き方改革と現場環境の改善を通じて「若い世代から選ばれる建設業界」への転換を進めている。国土交通省の石井信氏は、 「直近の施策として象徴的なのが、現場での週休2日の確保です。従来は週休1日や、いわゆる”4週6休“と呼ばれる働き方が一般的で、建設業の労働時間は他産業よりも長い状況が続いていました。しかし平成30年6月に成立した改正労働法による時間外労働規制が令和6年4月から建設業にも適用されたことにより、業界全体として働き方は徐々に改善の方向に向かっています。それでも、なお長時間労働が残っている現場もあり、さらなる改善が必要だと考えています」と語る。
また、現場のハード面での改善も急速に進んでいる。国が主導を取り、女性や若年層が働きやすいよう、快適トイレの標準化、休憩スペースの整備、安全装備の充実などが積極的に進められている。
建設現場では男女共用のトイレだったが、男女別にわけることや洋式便座、水洗機能、におい逆流防止、入り口に目隠しを設置することなど建設現場で利用される仮設トイレについて基準を設けるようになるなど、働きやすい職場づくりを促進している。
また、賃金水準も厚生労働省「毎月勤労統計調査」(一部抜粋して国土交通省が作成)によると、令和元年には建設業の一日当たりの賃金の推移が建設業1万9838円、製造業1万9526円と逆転。建設業界は令和4年までの過去11年で25.4%の伸び率を示している。
このように建築業界での賃金水準が上昇傾向にあり、働きやすい環境づくりが行われている一方で、 世間のイメージは昭和期の「きつい・汚い・危険(3K)」のままで変わっていないという現状がある。
進路選択で工業高校に進学した生徒も「建設業は厳しいのでは…」というイメージがいまだに強いためか、他産業を選ぶケースが多く見られる。実際の現場環境が改善されているにもかかわらず、この”実態とイメージのギャップ“が建設業界選択の大きな障壁となっているといえるだろう。
このギャップ解消に向け、国土交通省は文部科学省と連携し、高校生や保護者への情報発信を強化する方針を示している。 「私たちは『働きやすさ』と『適正な処遇』の両面から、建設業界そのものを変革していく必要があると考えています。労働環境の改善と賃金水準の底上げを進めることで、より多くの人に選ばれる業界へと成長させることが、今後の重要な使命だと思っています」(国土交通省 石井氏)
老朽化インフラの更新需要が高まるなか、建設業における若手人材の確保は、社会の安全を左右する重要な課題だ。現場の改善と正しい情報発信により、今後、建設業が「選ばれる仕事」へと転換することが期待される。

編集・ライター/松葉紀子(spiralworks) 撮影/編集部、荒井健
本文はCareerMapLabo Vol.7(2026.3月発行)内の掲載記事です。記載されている内容は掲載当時のものです。

石井 信Shin Ishii
国土交通省
不動産・建設経済局
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