2026.06.30

なくなったら困る 本当に必要な日本の「6つの仕事」

new
なくなったら困る 本当に必要な日本の「6つの仕事」
AIの台頭や労働力不足により、今後なくなる仕事が増えると予測されているが深刻な日本。
その一方で、「AIには代替されない」と言われる仕事のほとんどは、専門職の領域にある。
今回は、その専門職の中でも、特に「なくなると困る」仕事を予測してみた。
将来のキャリアを考える、一つのきっかけにしてほしい。
現在も人手不足であり、今後さらに深刻化する仕事がある。
編集部では「なくなりそうだけれど、実際になくなったら本当に困る仕事」をピックアップ。
このまま何の打ち手もなければどうなるのか、未来を予測してみた。

建物・インフラが老朽化未来の日本に住む場所は残る?

 道路や橋、上下水道といった人々の生活に必要不可欠なインフラを整備する「土木」の仕事。「3K(きつい、汚い、危険)」とのイメージもあり、なり手が少ない仕事の代表格とされている。一方で、土木工事の現場を支えてきたベテラン技能者が高齢を理由に離職することで、深刻な労働力不足が懸念されている。  
 一般的に、インフラを始めとするコンクリート構造物の寿命の目安は概ね50年とされているが、1960~70年代の高度経済成長期に整備されたインフラの多くは寿命を超えており、全国的に補修が待ったなしの状態にある。  
 このまま土木の分野に新たな人材が入ってこない場合、首都機能を守るため都心のインフラ補修が優先され、地方に行くほど放置されるリスクが高まるだろう。穴が開いたでこぼこの道路、亀裂の入った橋梁の使用は危険を伴う。人が安全に住める場所がどんどん狭まっていくかもしれない。  
 住宅、商業施設、公共施設などの建築物を新築、増改築する「建築」の仕事も同様だ。土木同様、建築分野も若手技能者のなり手が少なく、熟練技能者の大量離職が予想されることから、人手不足と技術継承が問題視されている。  
 インフラと同様、建築物にも耐久年数があり、建て替え需要は常にあるほか、維持管理・メンテナンスニーズも継続的に発生する。このまま建築工事に携わる人が減ってしまうと、工期の遅延とそれに伴うコストの増加、工事の品質低下が予想されるだけでなく、そもそも工事に着手できないケースも頻発するだろう。  
 一部の地域ですでに起こっているが、地方自治体では人材不足に加えて予算不足もあり、老朽化した建物を放置せざるを得ないというケースも増えるだろう。崩壊の危険だけでなく、地域の治安悪化にもつながりかねない。


技術変革で若手を呼び込める環境作りを

日本大学工学部 

岩城一郎 教授

『日本のインフラ危機』(講談社現代新書)
岩城一郎 著

 日本の建設産業は危機的状況にあります。膨大なインフラを抱える一方で、就業者の高齢化による人材不足、予算不足が深刻であり、老朽化に対応し切れていないのが現状です。  この状況を打破するには、DXを始めとする「技術変革」、地方自治体を束ねて人材を集約しインフラを管理する「制度変革」、メリハリある配分を徹底する「予算変革」、インフラはあって当たり前ではなく、当事者として捉える「国民意識の変革」が必要だと考えていますが、特に「技術」については、いわゆる「3K」イメージの軽減~若手人材の確保につながるため、早急に対応する必要があります。  
 例えば土木分野では、AIやロボット、ドローンなどの導入が進みつつありますが、この動きを加速させることで人間はオペレーションに注力できるようになり、現場負担を減らせるでしょう。技術を存分に取り入れることで、3Kから、3C(Cool・Creative・Challenging)な現場に変わっていくと期待されます。


自動車が動くのは整備があるから運送も物流も止まる未来が現実に?

 自動車の点検や修理、分解、整備など、自動車全般のメンテナンスを行う自動車整備の仕事。国家資格である自動車整備士の取得者は、いわば自動車の安全を守るプロであり、物流量の増加や次世代車の拡大などを受けて人材採用ニーズは旺盛であるものの、若手就業者の減少で慢性的な人材不足が続いている。若者の車離れなどを背景に、自動車整備士試験の2025年度の申請者数は過去最低を記録してしまった。  
 このまま自動車整備士のなり手が減っていけば、拡大の一途をたどる物流を支えることは到底できない。配送トラックが事故を起こしたり故障したりして、大混乱を起こしてしまう可能性がある。少なくとも現在のような即日配送を続けるのは難しいだろう。  
 高度なIT技術に対応できる整備士が不足すれば、EV(電気自動車)や自動運転といった次世代自動車の普及にも暗雲が広がる。日本は世界の中でもEVシフトや自動運転実装が遅れていると言われるが、整備士不足でますます後れを取ってしまう可能性がある。

介護難民が今後も増加する?自力生活ができなくなる未来?

 急激な少子高齢化の一方で、介護職員不足が深刻化している。仕事内容がハードである一方で賃金が高いとは言えないため、離職率の高さも問題になっている。厚生労働省では、2040年には介護職員が272万人必要であるにもかかわらず、約57万人が不足すると予測している。  
 少子高齢化の流れはますます加速する見通しのため、このまま介護職員が増えないと、介護施設に入りたいのに入れない介護難民が巷にあふれてしまうだろう。たとえ入居できたとしても、介護職不足によるサービス品質の低下は避けられず、老後のQOL(Quality of Life=生活の質)低下も予想される。  
 介護難民が増えれば、40~50代のベテラン世代が親の介護をしなければならなくなり、介護離職を余儀なくされてしまう可能性が高い。収入が断たれることで生活が破綻するケースもあるだろう。また、日本では生産年齢人口の減少による労働者不足が深刻だが、介護離職者が増えれば企業経営が回らなくなるかもしれない。

「食」日本の文化資産日本が儲ける稼ぎ頭の可能性

 レストランやホテル・旅館、病院、学校、介護施設などで安心・安全でおいしい料理を提供する、調理の仕事。「美食大国」と言われる日本の多様な食を支える重要な役割だが、ハードワークや修業期間の長さ、給与水準の低さなどを理由に若者離れが進み、調理師免許の交付数は年々減少している。  
 調理師のニーズは、病院や介護施設などの給食施設においても高い。調理担当者が不足すれば、安心安全な食事の提供が難しくなり、栄養管理や衛生管理の低下も避けられないかもしれない。  
 ユネスコ無形文化遺産に登録されている「和食」に限らず、日本において「食」は重要な文化の一つだ。多様でクオリティの高い日本の「食」は、インバウンド消費の対象でもあり、世界中の人に喜びや癒し、感動を与えている。海外にも打ち勝てる数少ない日本ならではの資産であり、調理の仕事は人々に喜びや癒し、感動を与える誇りある仕事と言える。

長寿が止まらないなら、予防医療が人生の中心になる!

 鍼灸は、つぼに針を刺したり灸で温熱刺激を与えたりすることで、身体の不調を軽減する医療技術。整骨は、骨折や捻挫といった外傷に対して手業で施術を行う。それぞれはり師・きゅう師、柔道整復師の国家資格が必要となる。  
 この鍼灸・整骨分野は、高齢化が進む日本においてさらなる需要拡大が予想されている。いずれも、高齢者の体にも負担が少ない治療法であり、地域医療や介護現場を支える仕事としてニーズが高まっている。近年は、予防医学の観点からも注目されており、ますますなくてはならない仕事になるだろう。  
 この動きを背景に、はり師・きゅう師、柔道整復師とも人数が拡大しているが、もしもなり手が減った場合、介護職員の負担増や、医療費の増大などが懸念される。

「食」と並ぶ「美」が日本の資産に技術の高さでインバウンド消費を狙う!

 頭髪の刈込や顔そりを専門とする理容師、ヘアカットやパーマ、カラー、メイクなどを手掛ける美容師。この分野における日本の技術水準の高さは海外でも知られており、日本観光に理容・美容体験を組み込む外国人観光客も多い。「ホットペッパービューティーアカデミー」の調査では、訪日外国人旅行者の50.2%が「日本の美容サロンの利用意向あり」と答えている。  
 一人ひとりの要望に丁寧に対応する理容・美容は、決してAIに置き換わることのない分野でもある。調理と同様、人々の喜びや感動につながる「感情労働」の代表格であり、インバウンド需要の担い手になっていく可能性もある。


<まとめ>
AIには奪われない「人」が重要な分野 10代こそ将来のキャリアの選択肢に

 ここで取り上げたものはいずれも、もしもなくなったら日本そのものが立ち行かなくなる可能性がある重要な仕事だ。AIの進化で奪われる仕事がある一方で、これらの分野の仕事はAIで効率化は図れども「人の知見やスキル」そして「人の手」が必要不可欠であり、今後もなくなることはない仕事と言える。  
 ほかにも電気工事士、看護・医療、運送・配送なども、「なくなると困る仕事」として取り上げられることが多いが、これらはいずれも、職業教育に資する専門学校が強みを持つ分野。ホワイトカラーばかりを量産するような教育体制では、この需要増におおよそ対応できないだろう。「未来が明るい」とは決して言えない日本で、どのようなキャリアを選択すればいいのか。キャリアの選択肢として、ぜひ今の10代にこそ目を向けてもらいたい領域だ。

編集・ライター/伊藤理子 イラスト/村上広恵(トロッコスタヂオ)
本文はCareerMapLabo Vol.7(2026.3月発行)内の掲載記事です。記載されている内容は掲載当時のものです。

伊藤 理子

伊藤 理子Riko Ito

フリーエディター・ライター

経済専門紙記者、日経ホーム出版社(現・日経BP)編集、金融情報記者、リクルート「週刊B-ing」「リクナビNEXT」編集などを経て、フリーに。Webサイトや情報誌、書籍などで仕事、キャリア、ビジネス、教育分野などのテーマを中心に取材・執筆活動を行う。

岩城 一郎

岩城 一郎Ichiro Iwaki

日本大学工学部 教授

  • シェアする
こちらもオススメ