2026.06.30

学校教育法改正により期待される専修学校の進化

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学校教育法改正により期待される専修学校の進化
2024年6月、改正学校教育法が国会で成立した。
主に専修学校制度の見直しが盛り込まれたこの改正は、準備期間を経て、いよいよ2026年4月1日に施行となる。
改正から2年弱、各方面で具体的な議論が重ねられてきたが、改正によって何が変わり、何が変わらないのか。
ここに改めて整理し、今後期待される新しい世界観について考えてみたい。

文科省総合教育政策局生涯学習推進課
専修学校教育振興室長

米原泰裕 氏

京都大学教育学部卒、東京大学公共政策大学院修了。博士課程在学中にインド・プネー大学でサンスクリット学を学ぶ。2001年文部科学省入省。2020年外務省へ出向。在インド日本大使館勤務を経て、2024年から現職。

制度発足から50年の節目で、「過去最も大きな法改正」が施行

 はじめに、本特集で扱う学校教育法改正は、制度上は「専修学校」を対象としているが、その中心にあるのは「専門学校」である。というのも、今回の学校教育法等の改正について、文部科学省は、「専修学校における教育の充実を図るため、専修学校の専門課程の高等教育機関としての位置づけを明確化すること」を改正の目的として明示しており、また政府の国会答弁でも「専門学校を高等教育機関として位置づけ直すために単位制の導入などが図られた」と説明された。そこで、本特集では法改正が主に専門学校に与えるインパクトについて、その未来について考えていく。  
 専門学校という存在は、もうずっと以前から、大学や短大と並んだ高校卒業後の進路のひとつ、高等教育機関として認知されてきた。しかし、実は制度上は大学(短期大学含む)とは異なった立ち位置に据え置かれたままとなっており、それが今回の法改正によって高等教育機関として明確に位置付けられることとなった。つまり、ようやく制度が実態に追いついたと言える。文科省総合教育政策局生涯学習推進課 専修学校教育振興室長の米原泰裕氏に、今回の制度改正についてたずねると「専修学校制度が制定されて50年の節目のなか、”初めて“ともいえる大きな改正だと思っています。現在、専門学校は全国で2700校、約56万人が学んでおり、実践的な職業教育機関として、医療・福祉・工業など幅広い分野で社会基盤を支える人材を輩出しています。だからこそ、専門学校を法制度上も高等教育機関であることを明確化し、さらなる振興と向上を図っていく必要がある、ということです。大きな変更となるからこそ、施行がゴールではなく、そこから現実に運用していくことが大切です」と話す。

高等教育機関として、国際的な通用性を視野に

 改正の柱はいくつかあるが、米原氏が特に大きいと感じるのは『他の高等教育機関との制度的整合性』と『質保証』だ。「具体的な改正内容としては、例えば学修時間の基準を時間制から単位制へ変更など主に6つありますが、いずれも、他の高等教育機関と制度的な整合性をとり、国内はもとより、国際的通用性を高めるものです」。  
 『質保証』についても同様だという。大学と同等項目での自己点検評価を義務付けるとともに、外部評価(第三者評価)が努力義務となった。「第三者評価を制度に入れること自体が、将来的な通用性を高めるために重要でした」と米原氏は話す。しかし、国内の専門学校全てにおいて第三者評価のサイクルを作りあげていくためには、課題も多い。「施行開始は4月ですが、制度を導入することが目的ではないので、質の高い評価を行っていただくためにも時間をかけて伴走的な支援が必要です。評価団体の立ち上げ支援や評価者の育成、学校関係者向けの研修や、細かいノウハウの提供などの支援も考えています」。

 「専門職人材を社会へ送り出す」法改正でその役割が明確化

 法改正そのものは、実質的に高等教育を担う立場であった専門学校側からの長年の働きかけが結実したとも言えるが、それが「今」なされたことには、急速な社会変化が背景にある。2024年度の日本国内の18歳人口は約109万人(総務省推計)で、ほぼ前年から横ばいだが、一方で出生数は66万人台(厚生労働省データによる推計)に留まり、少なくとも18年後には18歳人口が40万人減となることが明白だ。労働人口減少が待ったなしの現状で、いかに生産性の高い人材を育成していくのか。留学生やリカレントなど、専門学校に寄せられる期待は大きい。 「専門学校は、社会の変化に即応してカリキュラムを作り、地域の人材ニーズに合わせて動けるという大きな強みを持っています。これは他の高等教育機関と比べても、特筆すべき強みと言えます。都道府県所轄ということもあり、自由度・柔軟性・スピード感が抜群に高い。法改正を契機に、この大きな強みを生かして、他の高等教育機関と役割分担し、また競争しながら、質の高い人材輩出を期待しています」。


制度改正によって可能になる学校と職業との「往還」

九州大学名誉教

吉本圭一 氏

 1976年の専修学校制度発足以来、いわゆる一条校との処遇の差が生まれた専修学校では、その改善・是正に向けた取り組みが重ねられてきました。奨学金事業の対象化や学位・資格の付与、教育の質保証の制度化など、学生・卒業生の価値を高め、職業教育の地位向上を目指して、多方面から制度充実が図られてきた歴史があるのです。そうした積み重ねの上に、今「専門学校は高等教育機関である」と明確化され、単位制の導入や称号制度の整理など、具体的な枠組みの改定が行われようとしています。これは単に「大学や短大と揃えた」という意味ではありません。「この学修で単位を取得していること」が、次の学びへと接続される可能性を持つという点に、本質があります。  
 例えば、専門学校で規定単位を修得し専門士の称号を得た学生が、社会に出た後に大学でリスキリングを志す際、取得単位が大学で認定され得る道が開かれたのです。分野ごとに今後の設計は必要ですが、こうして学校と社会(職業)を行き来する職業教育こそがリカレント教育であり、今後の産業人材育成の中核になるはずです。こうした仕組みは、海外での学習補完や留学生受け入れにも通用性を持ちます。職業は人を自由にし、世界のどこへでも持っていける武器です。その武器を身につける道筋もまた、自由に往還できるものであるべきでしょう。その道筋が一つずつ形になりつつあることを、心からうれしく思います。


編集・ライター/百合草史恵  監修/吉本圭一(九州大学名誉教授)  イラスト/村上広恵(トロッコスタヂオ)
本文はCareerMapLabo Vol.7(2026.3月発行)内の掲載記事です。記載されている内容は掲載当時のものです。

百合草 史恵

百合草 史恵Yurikusa Fumie

編集・ライター/フリーランス

株式会社リクルートに入社、HR領域において、主に制作ディレクターとして数多くの企業・社長・社員を取材。取材対象者自身が気づいていない本音や課題を引き出し、言語化することを得意とする。株式会社リクルートスタッフィングへ出向し、ジョブコーディネーターとして登録スタッフの本音をインタビューした経験を活かし、就職情報誌「週刊B-ing」編集部へ。以降、フリーランスとして採用・ビジネス・教育領域の編集・制作・ライティングを行う。

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