2026.06.30

若者離れの自動車整備業界変わる現場と働き方が未来を拓く

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若者離れの自動車整備業界変わる現場と働き方が未来を拓く
若者減少と旧来のイメージで人材不足が続く自動車整備業界。
しかし現場は電子化・省力化が進み、働きやすさも向上している。
変革が進む今、その魅力をどう伝えるかが問われている。

お話を伺ったのは…

国土交通省
物流・自動車局 自動車整備課

林 健一 氏

 自動車整備業界では、深刻な人材不足が続いている。全国自動車大学校・整備専門学校協会の調査によると、自動車整備学校への入学者数は2003年には1万2394人だったのが、2024年には7068人となり、20年前と比べると約半減している。背景について国土交通省の林健一氏は、次のように分析する。
 「自動車整備士の減少には、職業選択の多様化、若い世代の減少、若者の車離れが要因であると考えています。しかしながら、公共交通が不十分な地域では車の必要性はますます高くなっており、AI時代においても安定して仕事ができ、また、地域を支えるやりがいのある仕事であるという自動車整備士の魅力を理解してもらう必要があります」  
 ”油まみれで大変な仕事“”給与が低い“といった旧来のイメージも根強く、若い世代が自動車整備士という職を選びにくい状況が続いている。しかし近年、現場の実態は大きく変わりつつある。ディーラーを中心に設備の更新が進み、整備は電子制御システムを読み取る診断作業が主軸となっている。従来のように”勘に頼る“整備は少なくなっているのだ。作業場もクリーン化が進み、整備士が油で汚れる場面は格段に減っている。また、働き方にも変化がある。多くのディーラーでは火曜・水曜の週休2日制が確保され、給与水準も10〜15年で改善が進んだ。  
 「自動車整備業は中小企業が多く、基本的な労働環境の整備が重要です。令和6年には国土交通省として『働きやすい職場づくりガイドライン』を作成し、定着を促す働きがいの向上に取り組んでいます。自動車整備業界が若者に選ばれ、離職者が戻るためには、賃金水準の引き上げと、その動きを定着させることが欠かせません。生産性向上や省力化も進み、トルクレンチや電動工具、タイヤ昇降機の普及で作業負担が軽減。女性や高齢者も働き続けやすい環境が整いつつあり、これらをガイドラインに盛り込み推進しています」(林氏)  
 今後も整備現場の環境改善と高度化に対応した働き方を進め、若者に魅力ある仕事として正しく伝えることが、未来の担い手確保につながっていくだろう。


働きながら学ぶ、新しい整備士育成のかたち ドイツの職業訓練制度を取り入れた、日本初のプログラム

ドイツ発の実践的職業教育「デュアルシステム」が日本で始動。 現場教育と理論学習を融合し、 深刻な人材不足に対する新たな人材育成モデルとして注目を集めている。 このコラムでは、取り組みの現状についてご紹介する。

お話を伺ったのは・・・

在日ドイツ商工会議所 (AHK Japan)

ルーカス・ヴィトスアスキー氏(左)

植田 大氏(右)

村田紀子氏(中央)

 ドイツのデュアルシステム(職業訓練制度)は、企業での実務訓練と職業学校での理論学習を並行して行うもので、在日ドイツ商工会議所が2024年4月から本システムに基づく「自動車整備士養成プログラム」を日本でスタートさせた。  
 この制度を利用する自動車整備士の訓練生は、企業と契約を結び、3年間のうち、70%は企業での実地訓練、30%は学校での理論学習になる。企業によって週4日出社、1日通学の場合もあれば、1年当たり9カ月ほどの出社、3カ月ほどの通学というケースもあるが、実車を用いた故障診断や部品交換、電子制御システムへの対応など、整備士に必須の技能を現場で身につける。一方、学校では機械・電気・規制などの理論を体系的に学び、知識と実践を結びつけることで、短期間で即戦力へと成長できる仕組みだ。  
 在日ドイツ商工会議所のルーカス・ヴィトスアスキー氏は、「デュアルシステムの強みは、学校で理論を学ぶのと同時に現場で働きながら実践を学ぶことができるため、優秀な人材を早く育成できる点だ」と話す。  
 そのうえで、韓国では2017年にデュアルシステムを立ち上げて以降、これまでに270人の修了生を輩出、現在約400人の訓練生を受け入れるなど成功を収めている。この事例を踏まえ、日本でも同様の成果を目指したい考えだ。 「当会議所が行う在日ドイツ系企業への調査でも人材確保は常に最重要課題とされている」と話すのは植田氏。若年層を早期に受け入れて現場で育成できる点は企業側にとって大きな利点だ。また村田氏は「ドイツの試験は故障診断から修理、見積もりまで求める実務性の高い内容で、3年の訓練で日本の2級相当の技能が身につく」と強調する。  
 訓練生には給与が支払われ、学びながら働けることが就業意欲を高めている。さらに、電動化などの技術革新に応じてカリキュラムが継続的に更新される点も制度の強みだ。産業界・教育機関・行政が連携し、技能形成を社会全体で支えるドイツの仕組みは国際的にも高く評価されており、日本の人材不足解消に向けても有効なアプローチの一つとして期待が高まっている。

<参加教育機関>

阪神自動車航空鉄道専門学校

特定非営利活動法人メカニックカレッジ

専門学校 太田自動車大学校

\指導する自動車学校の声/

学校法人太田アカデミー 専門学校
太田自動車大学校
学校法人常務理事 学校長

田鶴大輔 氏

 デュアルシステムは、働き始めてから自分に足りない基礎を学び直せる仕組みだと感じ、導入を決めました。自動車産業について社会に出てから車に興味を持つ人も多い。自動車整備士の不足は深刻なので、そうした方にキャリアの選択肢を広げる学びを提供したいと考えています。メーカー横断のキャリアにも役立つ国の資格取得を支える意義も大きいと捉えています。

<参加企業>

研修生たちは車体を機械で持ち上げ、自動車の底面をのぞき込む

広々とした実習室にズラリと並ぶ、実車を活用して学ぶ研修生たち

\訓練生たちの声/

江東BMW 野本大輝さん(36歳)

以前は、洗車のアルバイトをしていたのですが、幼い頃に憧れた車への思いを原点に、デュアルシステムで自動車整備士を目指すことにしました。構造を理解したことで作業への意識も高まり、国家資格取得と「任せたい」と思われる整備士を目指しています。(写真左)

MINI亀有 尾熊剛樹さん(19歳)

5歳のときから車に魅せられMINIとの出会いで整備士を志しました。新入社員として入社し、デュアルシステムを通じて実技と理論の両方を学びながら、MINI以外の自動車の構造にも触れて視野が広がりました。基礎を磨き、どんな車にも自信を持って対応できる整備士になりたいです。(写真右)

\企業トレーナーの声/

双日オートグループ東京株式会社
アフターセールス部
サービスマネージャー  

平賀敬浩 氏

 デュアルシステムの初期から参画してきた当社は、整備士の育成に積極的に取り組んでいます。現場では、訓練生が学びをすぐに実務へ生かせるよう、先輩社員が丁寧に支援し成長を後押ししています。学びと実践を往復できるこの仕組みは、早期に現場へなじむ即戦力を育てられることが大きな強みです。

編集・ライター/松葉紀子(spiralworks)  撮影/荒井健、保田敬介
本文はCareerMapLabo Vol.7(2026.3月発行)内の掲載記事です。記載されている内容は掲載当時のものです。

林 健一

林 健一Kenichi Hayashi

国土交通省
物流・自動車局 自動車整備課

ルーカス・ヴィトスアスキー

ルーカス・ヴィトスアスキーLucas Witoslawski

在日ドイツ商工会議所 (AHK Japan)

植田 大

植田 大Dai Ueda

在日ドイツ商工会議所 (AHK Japan)

村田 紀子

村田 紀子Noriko Murata

在日ドイツ商工会議所 (AHK Japan)

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