今さら聞けない「学校教育法改正」による変化6つのポイントを解説します。
2024年6月に、学校教育法の一部を改正する法律が可決され、施行は2026年4月1日となった。いよいよその施行の時となるものの、関係者が「過去で一番大きな改正」と口を揃える制度改正だけに、影響範囲も大きく、決定以降、どこをどう変えるのか、実際にどう運用していくのか、職業教育に関わる各種団体、都道府県自治体、そして各専門学校では、幅広く議論が続いている。変更だけで済むものもあれば、制度設計や準備に時間がかかるものもあり、学ぶ側の学生や高校の先生方には、実態がよくわからないかもしれない。そこで、今回の改正は、学ぶ学生にとってどういう意味があるのか、どんなメリットとなるのか、簡単にポイントを説明する。
(※ここではあくまでも改正のポイントや考え方を解説します。実際の運用や設計については、進学を検討されている専門学校等にお問合せください)
POINT1 入学資格
入学資格が大学・短大と同等へ
変更の概要:専修学校の専門課程において教育を受けることができる者の要件について、高等学校 等を卒業した者に「準ずる学力があると認められた者」から、高等学校等を卒業した者 と「同等以上の学力があると認められた者」に改める(第125条第3項関係)
〇高等学校等を卒業した者に準ずる学力があると認められた者
↓
◎同等以上の学力があると認められた者
POINT2 呼称
呼び方が「生徒」から「学生」へ
変更の概要:専修学校専門課程の在籍者の呼称を「生徒」から「学生」に改める(第128条関係)
↓
学生

POINT3 単位制への移行
授業時間数→単位数へ
変更の概要:
専修学校となるために必要な要件のうち、「授業時数が文部科学大臣の定める授業時数以上であること。」の「授業時数」を「授業時数又は単位数」に改める(第124条関係)
一方大学・短大等は「単位数」を採用してきたことにより、以下のようなデメリットがあった。
〇学修成果の比較・可視化が困難
〇単位互換・編入・進学時の整理が複雑
〇国際的な資格枠組み(単位換算)との接続が弱い
↓
そこで、学習時間基準を「単位数」でも定められることとなった。
◎45時間の学修時間=1単位
◎修了要件は、修業年数×31単位以上 (昼間学科の場合)
結果として大学と同じ「単位制」が選択できるようになるが、履修形態や必修構成は異なる見込み。というのも、専門学校は、特定の業種や職種への就業が前提なので実習や演習の時間数が規定されているものが多く、単位制になっても、学びの中身や密度が維持される制度設計が必要になりそうだ。


POINT4 専攻科
専攻科の設置が可能に
変更の概要:
専修学校(修業年限が二年以上であることその他の文部科学大臣の定める基準を満たす専門課程(以下「特定専門課程」という)を置くものに限る。)には専攻科を置くことができるものとし、専攻科は、専修学校の特定専門課程を修了した者等に対して、精深な程度において、特別の事項を教授し、その研究を指導することを目的とし、その修業年限は一年以上とする。(第125条の2関係)
◎文部科学大臣が認定した専攻科(適格専攻科)については、
大学院入学資格が付与される仕組みが設けられた。

POINT5 称号
専門士・高度専門士
専修学校の特定専門課程を修了した者は、文部科学大臣の定めるところにより、専門士と称することができる。(第131条の2関係) 大学院等の入学資格に関する文部科学大臣の指定を受けた専修学校の専門課程又は専攻科を修了した者は高度専門士と称することができることとする (施行規則第186条の3)
↓
◎改正後の「称号」 学位(学士・修士など)ではないが、専門士は学校教育法で定められた称号となった。2年以上の専門課程(特定専門課程)は全て該当するため、2年以上の専門学校卒→専門士、大学院入学資格が付与された専門学校卒または専攻科修了(専門課程もあわせた通算4年以上)→高度専門士、となる。

POINT6 質の保証と評価
大学と同等の自己点検評価が義務化、第三者評価が努力義務
変更の概要:
専門課程を置く専修学校は、その教育水準の向上に資するため、文部科学大臣の定めるところにより、当該専修学校の教育、組織及び運営並びに施設及び設備の状況について自ら点検及び評価を行い、その結果を公表するとともに、当該状況について、当該専修学校の職員以外の者で専修学校に関し広くかつ高い識見を有するものによる評価を受け、その結果を公表するよう努めること。 (第 132 条の2関係)

大学等と同様に教育研究活動・組織運営等について自己点検評価を行い、その結果を公表することが義務化。
〇これまでにも自己評価義務はあったが、項目が「初等・中等教育」と同等の義務だった
↓
◎高等教育機関である以上、(大学等と同等に)教育の質を自ら点検評価し、社会に説明できる仕組みを持つことが求められる
2:第三者評価(外部評価)の努力義務化
外部の識見を有する第三者による評価を受けるよう努めること(=努力義務)
◎専門性・中立性をもった組織や有識者による5年に1度の評価

価値を可視化し、信頼を築く。「質保証」の未来とは
「質保証」とは、価値をどう測り、どう説明するかという問いでもある。製造業やサービス業が成果そのものだけでなく、業務プロセスを管理・改善する仕組みを整えることで品質を担保してきたように、教育も自己点検評価、外部評価といった視点を組み合わせ、教育の中身や成果を社会に示すことが求められている。つまり質保証とは、単に優劣をつけることではなく、価値を可視化し、信頼を築くための仕組みだ。専門学校における最も尊重すべきステークホルダーは学生。彼らは学びの主体であり、教育の成果を社会に示す存在でもある。そのため資格取得、研究成果発表等と共に、就職率や就職先実績なども学校の説明責任や質保証と強く結びつく。これは、大学と異なり、就職を目的・前提とした専門学校ならではの品質保証と言える。CAREERMAP Labo編集長の板倉真紀氏は「就職先=出口の観点からいくと、学修成果の本当の価値は、就職後にあるとも言えます。修了生たちがどこでどう活躍しているのか。何が評価されることなのか。それを知り柔軟に対応していくことが、さらに教育の質を向上させることに繋がると思います」ますます、「質とは」について考える重要性が増していきそうだ。

CAREERMAP Labo編集長
板倉真紀
(株)リクルートで採用広報に長く携わり、事業会社にて人事責任者を10年歴任し、現Careermap事業に参画。職業教育の認知を広める活動が現在の使命。
第三者評価の目的は、評価でも順位づけでもなく進化を加速させるサイクルづくり
ここまで見てきたように、今回の法改正の中でも、実務的に、また職業教育の未来という観点から見て、最もインパクトが大きいのが「質保証」だろう。第三者評価の目的は、学校を評価し、優劣や順位をつけることではない。専門学校自らが行う自己点検・評価を起点に、外部の視点を通して教育内容や成果を可視化し、改善につなげていく。その取り組みを制度として継続可能なものにすることにこそ意味がある。
社会や産業の変化が速い時代において、教育もまた更新され続ける必要がある。第三者評価は、専門学校が社会からの信頼を得ながら、自らの教育を磨き続けるための仕組みであり、進化を後押しするサイクルづくりだと言える。それは高等教育機関として専門学校に寄せられる期待であり、その柔軟性を生かした取り組みが今後問われていくことになるだろう。


制度改革の先に見える、専門学校の未来~学びを支える
「社会的インフラ」へ~
職業教育は、今や若年期で完結するものではなく、専門学校には社会人や留学生を含むあらゆる世代が、人生のさまざまな段階で学び直せる場となることが求められています。そのためには、マイクロクレデンシャルやモジュール型学習、オンラインの活用など、時間や場所の制約を超えた学習機会を提供し、生涯学習の拠点として機能を強化していく必要があります。ただし、専門学校の強みが、社会や産業のニーズに即応した実践的な職業教育にある点は、これからも変わりません。特定の業種・職種に必要な知識や技能を体系的に学ぶという本質は、維持されるべきです。その上で、今後は、専門性に加えてAIやDX等のデジタル技術を汎用的スキルとして併せ持つ専門職人材の育成が、より一層期待されるでしょう。こうしたことから、専門学校は、多様な人々の学びを支える「社会的インフラ」と捉えており、今回の法改正は、その実態を明確にし、職業教育の地位向上と体系確立に向けた大きな一歩だと考えています。『存在価値のあるものは必ず残る』。その信念を持ちながら、教育の質の向上と学校運営の健全化に努め、2030年、2040年を見据えて、専門学校の未来を創っていきたいと念じています。

全国専修学校
各種学校総連合会会長
多忠貴 氏 Tadataka Ohno
1984年日本電子専門学校卒。放送業界に従事した後2006年電子学園入職。2016年より電子学園理事長。2022年公益社団法人東京都専修学校各種学校協会会長、2024年全国専修学校各種学校総連合会会長及び全国専門学校協会会長就任。
編集・ライター/百合草史恵 監修/吉本圭一(九州大学名誉教授) イラスト/村上広恵(トロッコスタヂオ)
本文はCareerMapLabo Vol.7(2026.3月発行)内の掲載記事です。記載されている内容は掲載当時のものです。

百合草 史恵Yurikusa Fumie
編集・ライター/フリーランス
株式会社リクルートに入社、HR領域において、主に制作ディレクターとして数多くの企業・社長・社員を取材。取材対象者自身が気づいていない本音や課題を引き出し、言語化することを得意とする。株式会社リクルートスタッフィングへ出向し、ジョブコーディネーターとして登録スタッフの本音をインタビューした経験を活かし、就職情報誌「週刊B-ing」編集部へ。以降、フリーランスとして採用・ビジネス・教育領域の編集・制作・ライティングを行う。
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