2025.06.12

墨田区と専門学校日本動物21が協定締結!23区で初取組み

墨田区と専門学校日本動物21が協定締結!23区で初取組み

【概要】
墨田区の在住者対象に災害時、ペットと同じ空間で過ごせるような避難場所を提供すべく、2024年11月に墨田区と学校法人 立志舎 専門学校日本動物21が協定を結んだ。人の避難はもちろん、ペットの安全な避難を実現しようとしている。

【ビジョン】
災害の多い日本において、人の避難だけでなく、家族同然のペットと同じ空間で避難できる場所を確保する。23区では初の協定で、この取り組みをきっかけに全国の自治体はもちろん、企業や学校にペットを守る取り組みが広がることを目指す。

<地方創生の仕掛け人たち>

学校法人立志舎 専門学校日本動物21 校長
早川公善 Kimiyoshi Hayakawa

「当校では動物看護・グルーミング・しつけトレーニングを総合的に学ぶ『よくばりカリキュラム』を採用。幅広いスキルを持った人材を育成し、災害時にも学生が被災していなければ、ペットと飼い主様のケアをしていけるような体制を整備したいです」

墨田区区役所 防災課 課長
岩本健一郎 Kenichirou Iwamoto

「この取り組みにより、社会課題の解決につながったと認識しています。墨田区では民間との連携やDX化等、さまざまな工夫で防災力の強化を進めています」

墨田区区役所 防災課 主任
澤田岳史 Takeshi Sawada

「課長はやりたいことをまずは聞いてくれ、どうすれば実現できるかを一緒に考えてくれる方。異動したてのころは苦労しましたが、今は楽しく仕事に取り組んでいます」

前に進むためにも一歩を踏み出した

 環境省が2023年6月に発行した「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン」によると、大規模災害の経験から飼い主とペットが同伴避難するのが合理的と考えられるようになっている。しかし同じ部屋で飼い主とペットが一緒に泊まることはアレルギーや衛生面の問題から実現できなかった。東京都・墨田区の区議会でも飼い主とペットが同じ部屋に避難できないか、たびたび議論が上がったものの、解決に至っていなかった。そのような状況のなか、学校法人 立志舎 専門学校日本動物21と協力しようという話になったのは2023年ごろだった。
「当校には飼育犬がおり、予防注射の手続きなどで以前から墨田区の生活衛生課とはつながりがありました。あるとき、防災の話が出て、防災について先進的な取り組みを行う墨田区と地域貢献を念頭に置く我々の思いが一致して今回の取り組みが誕生したのです」と振り返るのは、専門学校日本動物21の早川公善校長だ。
 当初、23区では前例のない取り組みだったため、調整が難航すると予測された。しかし「細部にこだわりすぎて進めなくなるよりも、まず一歩踏み出し、課題が出てきたら修正すればいいと考えました」と当時を振り返る、墨田区防災課の岩本健一郎課長。
 2024年11月12日に避難場所を提供する専門学校日本動物21と墨田区は協定を結び、学校で締結式が行われた。この協定では、災害発生時に学校の実習室を避難所として開放。最大で100組の受け入れをすることが決まった。これまで飼い主とペットが同じ空間で過ごすことができなかったのが、ペットと同じ空間で過ごせる避難所が用意されることになる。
「専門学校日本動物21様に100人受け入れていただくことにより、小中学校の体育館に100人が避難するスペースが生まれることになりました。結果的に人の避難所のスペース拡大にもつながりました」(岩本課長)

全国的にも珍しい協定のため、文書作成や調整が難航

 23区で初の協定でかつ、全国的に珍しい取り組みだったため、協定文書の作成が難航したという。
「協定文書を作成するときに前例がなかったので言い回しや内容についても防災課だけでなく、生活衛生担当である保健所や協定先にも確認して、細かいところまで調整していくのは非常に苦労しましたね」(澤田岳史主任)
 ちなみに発表のタイミングは当初、11月1日(ワンワンワンの日)を狙っていたが、調整が叶わず、11月12日の記者会見実施となったと墨田区防災課の岩本課長は残念そうだった。
 早川校長は「今後、他の学校様や企業様が同様の取り組みを始めるきっかけになればうれしいです」と語る。
 協定を結んだ後にもまだまだ課題はある。墨田区には犬や猫を合わせると、1万6000頭ほどいる。そこで受け入れる100組に絞るための基準を明確化する必要があるというのだ。
 「年齢」「高齢動物の介護」「ケアの必要性」などの基準を明確にすることで災害の混乱時の受け入れを円滑に行えるようにしたいと話す。
「想定外の問題は必ず発生すると思うので、今後の取り組みの中で少しずつ課題を洗い出していきたいです」(早川校長)
 またこの取り組みを通じて、専門学校日本動物21は少子化が進む中、動物福祉にも力を入れていきたいと早川校長は語る。
 この協定を結んだ後、国や他の自治体に加え、メディアから墨田区と専門学校日本動物21には問い合わせが増加。また、区議会議員や国会議員、内閣府の大臣政務官が視察に訪れ、東京都の保健所課長会でも取り上げられたり、他の自治体でも導入を検討し始めたりするところも出てくるなど変化が見られる。災害が発生したときには墨田区では飼い主とペットが安心して避難できる場所が確保できた一方で、今後、全国での取り組みの広がりが期待される。


<他にもある!墨田区の避難時の取り組み>

●株式会社ダスキンと協定を結び、福祉避難所の設営を担ってもらうことになった(能登半島地震後)(2023年3月)

●Airbnb Japan株式会社と協定を結び、災害時に妊産婦用の避難場所として活用(民泊の避難施設としての活用協定は全国で初)(2023年11月

●東武トップツアーズ株式会社と協定を結び、移動手段や宿泊施設確保に関する連携協定を締結
(2024年8月)

編集・ライター/松葉紀子(spiralworks) 撮影/片山貴博
本文はCareerMapLabo Vol.6(2025.3月発行)内の掲載記事です。記載されている内容は掲載当時のものです。

早川 公善

早川 公善Kimiyoshi Hayakawa

学校法人立志舎 専門学校日本動物21
校長

岩本 健一郎

岩本 健一郎Kenichirou Iwamoto

墨田区区役所
防災課 課長

澤田 岳史

澤田 岳史Takeshi Sawada

墨田区区役所
防災課 主任

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