専門学校のプロ講師から学び、自分の”好き”を軸に未来を拓く
カリキュラム構築を担った高校教員に、実施までの経緯を聞く。
<今回の主役校:四條畷学園高等学校>
1926年創立、大阪府大東市の私立高校。「実践躬行」と「Manners makes man」を教育理念に掲げる。設置学科は、「総合キャリア」「発展キャリア」「特別シンガク」の3コース。全コースで6限後から部活動が可能。
専門学校のプロ講師から学び、自分の”好き”を軸に未来を拓く
2022年度よりカリキュラムの大幅なリニューアルを行った私立四條畷学園高校。3コースのうちの1つである「総合キャリアコース」の目玉となっているのは、専門学校の先生を講師に迎え、高校生に対して全7回の授業をしてもらう「高専接続授業」だ。
「卒業生との会話の中で、『進学した学校はもう辞めた』と耳にすることがありました。進路のミスマッチがあると感じ、もっと早い段階から自分の将来を考える機会が必要だと思いました」。そう話すのは、高専接続授業の実現に向けて先陣を切った広報部長の小山先生だ。重視したのは、生徒を学校から解放すること。さまざまな人との出会いや体験によって、自分の好きと出会う機会を増やすことを意識した。すでに7回の講座を終えた1年生の変化を目の当たりにして、手応えを感じていると言う。
根底にあったのは、進路指導に対する違和感だった。「必ずしも大学へ進学することだけが、その生徒にとっての良い進路選択ではないと思っています。大事なのは、生徒自身が自分の納得する道を選び、高校を卒業した後も幸せな状態でいることです」。その思いを軸に、これまでに専門学校での体験授業を受けてきた生徒達の意向に耳を傾けながら、「生徒は何を求めているのだろう?」と考え続けた。そうしてできたのが、高専接続授業を核としたキャリアデザインのカリキュラムだった。
2年生までに、6つの専門分野に触れる
「連携したい専門学校には一校一校足を運び、思いを伝えました。中には、業界自体を盛り上げたいという思いで講座を引き受けてくれる専門学校もありました。大切なのは、一方的にお願いするのではなく、生徒、専門学校、高校の三者のwin-win-winを考えることだと思っています」。
同校の教員に高専接続授業の構想を伝えたときは、驚きと不安の声が多かったと言う。「その分野は詳しくないので教えられない」と抵抗感を示す先生の声を聞き、「生徒たちに伴走し、ファシリテートしてもらうことが大切なんです」と繰り返し伝えた。
そうして始まった高専接続授業は、全10講座。生徒は自分の興味関心に合わせて講座を選択できる。1年次は週1回100分間の講座が開講され、1年間で2講座の受講が可能だ。2年次は、週2回に増え、受講できるのは4講座となる。今年は、ほぼ100%の生徒が第1希望の講座を受講することができた。
人との出会いや体験から、自分に合った進路選択へ
実際にスタートしてみると、生徒や保護者からの評判は良いと言う。美容専門学校「西日本ヘアメイクカレッジ」の講座では、生徒たちにメイクセットが1人1個配布された。資生堂に勤めている方が講師となり、肌のタイプ別に合うメイクを紹介してもらう場面では、普段とは違う生徒の姿が見られた。「いつもは全くメモを取らない生徒が、ものすごく真剣にメモを取っていました(笑)。目を輝かせて講座を受けている姿を見て、やってよかったと思いましたね」。
各講座で学んだことは、学校行事で活かせる場面を用意している。「明らかに生徒たちの様子は変化してきていると感じます。『面白くない』『やっても意味がない』など、ネガティブな発言をする生徒は減り、『とりあえずやってみよう!』と前向きに動く生徒が増えました」。
高専接続授業の導入が、まさに自分の好きと出会うきっかけになり、学ぶ意欲を刺激したのではないだろうか。現在も、小山先生は新たな講座の開講に向けて、専門学校への訪問を続けていると言う。「生徒のニーズをキャッチするアンテナを張り続け、自分に合った進路選択につながるような取り組みを続けていきたいです」。四條畷学園高校の高専接続授業がどのようにアップデートされていくのか、今後の変化にも注目したい。
【専門学校に行ってみた!体験談】
四條畷学園高校 2年生 発展キャリアコース
上田 穂香 -水泳部-
ヘアメイクの専門学校では簡単なヘアアレンジを教えてもらい、調理の専門学校ではオムライスを作りました。どちらも先生が優しくアドバイスしてくれて楽しかったです。実は当時、卒業後は美容系の大学に進学すると決めていたので、専門学校に進学することは考えていませんでした。でも、専門学校であれば、毎日自分の好きなことを中心に学べると知って、大学以外の道も選択肢の1つとして考えるようになりました。
四條畷学園高校 3年生 総合キャリアコース
中尾 天馬. -吹奏楽部(打楽器)-
将来は音楽関係の仕事に就きたいと思っています。それ以外の選択肢も考えておきたいと思って、もともと興味があった服飾関係の専門学校で体験授業を受けました。授業で取り組んだのは、「自分の服をデザインする」という課題です。思ったより難しかったのですが、楽しくて以前よりも興味が湧きました。体験授業を受けてからは、服やデザインのことを自分でも調べてみようという気持ちが強まりました。
【専門学校コメント】
理容美容専門学校 西日本ヘアメイクカレッジ
田仲 恵 先生
受講してくれた生徒さんは美容が好きな子が多く、楽しみながら講座を受けてくれたと思います。講座での学びが生徒の皆さんの進路選択にも影響すると思い、興味を持ってもらえるように流行に触れつつ、美容の専門性も取り入れるようにしました。講師を勤めたのは、ヘアメイクアップアーティストや美容師、ヘアメイク経験のある教員など、プロとして現場に立っている、もしくはその経験がある4人です。わかりやすく伝えることも意識して実技の様子をスクリーンに映したり、実際に手を動かしてもらう時間も取り入れるようにしました。このような取り組みに関わらせてもらえて、私たち専門学校の教員も勉強になることが多くあるなと感じています。
【専門学校とコラボ】
<四條畷学園高等学校 高専接続の講座例>
○保育士:保育士になろう!/四條畷学園短期大学
○美容:トータルビューティ/理容美容専門学校 西日本ヘアメイクカレッジ
○IT :ICT、ゲーム、メディア/大阪電気通信大学
○服飾:服飾デザイナーになろう!/瀧本株式会社/大阪樟蔭女子大学
○語学:韓国語・韓国文化/大阪樟蔭女子大学
○健康:ビューティーヨガ/ヨガインストラクター
○医療:医療従事者になろう!/野崎徳洲会病院など
○文化:アニメ・声優/大阪アニメ・声優&eスポーツ専門学校
○栄養:調理師体験/辻調理師専門学校
○動物:動物看護、トリマー体験など/大阪ECO動物海洋専門学校
○心理:心理学を知ろう!/四條畷学園短期大学/大阪樟蔭女子大学
○経営:アイドルとマーケティング/帝塚山大学、DAO 大阪ダンス・俳優&舞台芸術専門学校
本文はCareerMapLabo Vol.1(2022.10月発行)内の掲載記事です。記載されている内容は掲載当時のものです。
小山 宣宏Nobuhiro Koyama
四條畷学園高等学校 募集広報部部長
四條畷学園高校は2校目。前任校での経営に対する強い危機感から、常に生徒が求める学校のあるべき姿を模索する。生徒に寄り添う姿勢から、学校説明会のプレゼン終了後には相談の列ができるほど人気である。
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