2026.06.30

ひと手間・ひと工夫で給食が変わる食育で広げる子どもの未来

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ひと手間・ひと工夫で給食が変わる食育で広げる子どもの未来
専門学校と地域が協力・連携し、地域再生に取り組む好事例をご紹介する連載企画。
今回は、実在の地域を題材に建築計画を行う地域密着型の実践教育と、
渋谷区とコラボして取り組む食育のプロジェクトについて、焦点を当て深掘りしていきます。

【概要】

服部学園と渋谷区は、小・中学生という成長期に学校給食を通じて、”食への関心や理解を深め、食に感謝する心“を育む給食改革として2021年~2024年まで『渋谷ワンダフル給食プロジェクト』を実施。専門的な食育の知見と、見た目・味・学びを融合したメニューを区内小中学校へ提供し、新たな食育の取り組みを実現した。さらに全国的な課題となっている部活動改革の支援など連携の幅を広げ、食を起点に子どもたちの可能性を育む地域モデルを築き、さらに食育の場を増やそうと取り組んでいる。

【ビジョン】

子どもが”食への関心や理解を深め、食に感謝する心を育む“環境を整え、給食や部活動を通じて楽しさと学びを両立した食育を実践する。こうした取り組みで地域、ひいては日本の”食“の未来を担う人材を育て、食を軸に専門学校と地域が連携する新たな教育モデルを確立する。

<地域創生の仕掛け人たち>

学校法人服部学園 服部栄養専門学校
理事長・校長
服部吉彦 氏 
Yoshihiko Hattori

私は今後、料理の技術指導にとどまらず、食育の一環としてテーブルマナーも積極的に取り入れていきたいと考えています。本校では食育を三つの柱で捉えており、その一つが「マナー・しつけ」です。食卓は、礼儀や思いやりを自然に身につけることができる大切な学びの場です。この部活動がその象徴となり、子どもたちを通して家庭の食卓の雰囲気までもより良いものへと広がっていくことを願っています。

一般社団法人 渋谷区スポーツ協会
専務理事 渋谷区教育委員会 教育委員
田丸尚稔 氏 
Naotoshi Tamaru

渋谷区の部活動改革では運動だけでなく文化活動にも取り組んでおり、料理・スイーツマスターは、そのなかでも人気のあるクラブです。学校の枠を超えて子どもたちが交流することや、活動を通じて食に関する将来の仕事を考えるなど、今までとは明らかに違うクラブ活動として確かな進化を遂げています。

新たな食との出会いの場である、食育プロジェクトの始動

 2020年の夏、服部学園の先代・服部幸雄氏と、渋谷区の長谷部健区長が出会ったことから、『渋谷ワンダフル給食プロジェクト』の物語は始まった。
 「服部学園は長年、食育を教育の中心に据えてきました。食育の講演会に参加された長谷部区長から、これまでも栄養バランスに優れた和食文化を味わう取り組みを行ってきましたが、この取り組みを発展させたいので、共に取り組めないかとお声がけいただいたのが始まりです」と、服部栄養専門学校の校長を務める服部吉彦氏は振り返る。  
 この出会いをきっかけに、翌2021年にスタートしたのが『渋谷ワンダフル給食プロジェクト』。2021年から2024年までの4年間、渋谷区内の小中学校の給食に”楽しさ“と”学び“を掛け合わせた新たなメニューを届ける食育の取り組みだ。2025年からは名称を『渋谷コラボ給食with服部学園』に変え、継続している。このプロジェクトが生まれた背景には、食への関心や理解を深めるということがあった。 「子どもたちは、私たち大人以上に味覚が敏感なところがあります。例えば、グリーンピースの青臭さが気になる、香りが強すぎる。それだけで食べなくなってしまいます」と服部校長は指摘する。  
 給食の現場で働く調理員や栄養士たちは日々、”どうすれば子どもたちにおいしく食べてもらえるか“と試行錯誤している。食材の扱い方や調理の工夫が重要になるが、現場だけでは限界がある。 「今回の取り組みを通じて給食の調理員や栄養士の皆さんにとっても、『こういう工夫があるのか』『こんな表現の仕方もできるのか』と新たな気づきが生まれるような支援をさせていただきたいと思っていました」(服部吉彦校長)  
 プロジェクトでは、月ごとに服部学園から和食、洋食、中華のシェフが考案したメニューが提案された。やがて調理の現場で変化は確実に表れてきた。 「『こういうやり方もあるのですね。次にやってみます』と前向きに取り組んでくださる方が増えていったのはうれしかったですね」(服部校長)

正しいだけでは子どもは動かない。大切なのは“楽しさ”

 学校給食を食べた子どもたちからは好評だということはすぐに服部学園の元にも届いた。 「報告を受けたときは本当にうれしかったです。食材の良さやひと工夫を加えたことが子どもたちに届いている証拠でした」と服部吉彦校長は微笑む。メニューのバリエーションも豊富で、見た目の彩りや食材の組み合わせが”ワクワク感“を生み、子どもたちの意識を大きく変えた。  
 一方で、渋谷区では全国でも先駆けて推進している部活動改革の一環として、学校ではなかなかできなかった、子どもたちのニーズに応える地域クラブ「シブヤユナイテッド」を展開している。そのなかで、服部学園とともに「料理・スイーツマスタークラブ」を運営する渋谷区スポーツ協会の専務理事、そして渋谷区教育委員会の教育委員を務める田丸尚稔氏は、教育の視点から次のように語る。
 「食育でも、クラブ活動でも、”指導“となると”正しさの伝達“に偏りがちですが、それだけでは子どもたちは動きません。服部学園に期待するのは、栄養や調理の正しさを教えてもらうことに加え、子どもたちが”楽しく食に関わる“仕掛けなのだと思います。給食のプロジェクトで使われていた”ワンダフル“という言葉がとても象徴的ですが、見た目の楽しさやワクワク感、レストランのような彩り―そうしたエンターテインメント性は、指導者が一方的に教えるのではなく、子どもたちが楽しく主体的に学ぶことを可能にします」

給食から部活動へと活動の場を広げる食育活動

 食育が給食に留まらず、部活動の場にも広がっていることは全国的に見てもユニークで面白い。先述の料理・スイーツマスタークラブでは、服部学園が年間を通じて月2回、80人の小中学生を対象に調理の実習を行っている。このクラブ活動では想定外の変化もあった。「なかなか学校に行くことが困難だった生徒が、このクラブには積極的に参加してくれていて、将来、料理人になりたいと夢を語ってくれたこともありました」と服部栄養専門学校で経営戦略室に所属し、部活動改革の取り組みを担当する星淳哉氏は語る。  
 所属する学校に閉じられていた部活動が、専門学校の施設を活用することで小中学校の枠を超えて生徒が集まり、新しい交流を生み出していること。そして部活動にはなかった専門的な講師の存在が、将来の仕事につながる体験を生徒に提供できていること。服部栄養専門学校だからできた、社会課題を解決する地域連携の新しい形が、ここにはあった。  
 さらに服部学園は静岡県河津町の料理教室、鹿児島食材を使ったメニュー開発、四国産の希少魚「あかえい」の商品化など、地域と連携した食育を全国で展開。茨城県の高校との弁当プロジェクトも進行中で、今後も食育の取り組みは全国へと広がっていくことが期待される。


<イベントに参加した学生の声>

栄養士科 2年
小林香澄さん 
Kasumi Kobayashi

外の大学でシェフを目指し、レストランでの厳しいインターンも経験しましたが、「おいしさだけでなく健康も届けたい」と気づき、栄養士の道へ。シブヤユナイテッドに関わるなかで、得意を輝かせる子どもたちの姿にやりがいを感じています。4月からは保育園の栄養士として、子どもたちにおいしくて身体にいいものを届けたいです。

編集・ライター/松葉紀子(spiralworks) 撮影/荒井健
本文はCareerMapLabo Vol.7(2026.3月発行)内の掲載記事です。記載されている内容は掲載当時のものです。

服部 吉彦

服部 吉彦Yoshihiko Hattori

学校法人服部学園
服部栄養専門学校
理事長・校長

田丸 尚稔

田丸 尚稔Naotoshi Tamaru

一般社団法人 渋谷区スポーツ協会 専務理事
渋谷区教育委員会 教育委員

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